2007 Fiscal Year Annual Research Report
小脳シナプス回路発達・制御におけるプレセレベリン・ファミリーの生理機能の解明
Project/Area Number |
07J00100
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三浦 会里子 Hokkaido University, 大学院・医学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 小脳 / プルキンエ細胞 / 平行線維 / シナプス / 遺伝子改変動物 |
Research Abstract |
プレセレベリン・ファミリーは現在までに4つのサブタイプ(Cbln1〜4)が同定されており、これらは補体成分であるClqファミリーに属し、6量体を形成していることが分かっている。脳内において、各脳領域の主要なニューロンには発現しておらず、むしろそれらに投射するニューロンに豊富に発現している傾向がある。特にプレセレベリン1(Cbln1)は小脳の顆粒細胞に非常に豊富に発現しており、プルキンエ細胞には発現していない。Cbln1の遺伝子欠損マウスにおいて、このマウスは重度の運動失調を示し、また平行線維-プルキンエ細胞(PF-PC)シナプスの密度が激減、さらにはPSD様の構造を持ちつつも平行線維終末と接合していないようなプルキンエ細胞のスパイン(freespine)が多数認められた。これらのことから、プレセレベリンは神経伝達物質として、シナプス前終末よりなんらかの形で放出され、シナプスの形成・制御に関与していると考えられている。しかしプレセレベリンの具体的な放出様式や、受容体やその他の関連分子などはほとんど分かっておらず、またCbln1以外の分子の機能や、その他の脳領域での局在などについても明らかにされていない点が多い。最近の研究から、小脳顆粒細胞にのみ発現しているCbln3は、PF-PCシナプスのシナプス間隙に集積し、Cbln1と複合体を形成することで平行線維終末から放出され、Cbln3単独では放出されないことが明らかになり、Cbln1との複合体において制御機能を有している可能性が示唆された。 昨年度には、Cbln1の遺伝子欠損マウスにおいて、成体の小脳付近の硬膜下にCbln1を投与することによる、PF-PCシナプスの構造および機能の変化を解析してきた。その結果、全体の約2割程度しかなかった正常なPF-PCシナプスが、投与後2日目には野生型マウスとほぼ同じ程度にまで回復するが、Cbln1の効果は持続せず再び元に戻ってしまうことが分かった。Cbln1投与後の時間経過に伴う構造変化の推移は、電気生理学的解析および動物行動実験から得られたものと一致していた。この結果から、Cbln1がPF-PCシナプスの形成だけでなく、その維持にも必要不可欠であるということが示唆された。(これらの内容は、論文として現在投稿中である。)また、Cbln1に対する特異抗体を作成することに成功した。現在この得られた抗体を用いて局在解析を行っているところであり、今年度も引き続きこの抗体を用いて様々な解析を行う予定である。
|
Research Products
(5 results)