2007 Fiscal Year Annual Research Report
ケニア野生生物保全におけるコミュニティ・アプローチの研究
Project/Area Number |
07J00114
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
目黒 紀夫 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 野生動物保全 / ケニア / アフリカ |
Research Abstract |
申請者は本年度の研究計画で、事例の追跡調査、新事例の調査、先行研究レビュー、その他(研究成果の公表)、の4点を予定していた。 現地調査に関しては、平成19年7月から10月および平成20年2月から3月の合計約5カ月行った。この間、以前から調査を行っていた事例(ケニア、カジァド県キマナ)に関しては、修士論文で扱ったコミュニティ・サンクチュアリの現状を把握すると同時に、地域住民の土地利用の変化(伝統的生業の牧畜から農業、観光業へ)に関する聞き取り調査を行った。サンクチュアリが経済面で一定の成果を挙げた事実は既に把握していたが、その結果として生じた最近の地域住民の生業・土地利用の変化が野生動物保全に及ぼす影響として、野生動物保全と対立・矛盾する可能性が高いことが分かった。これは保全の持続可能性を考える上で重要な点であり、今後も追跡調査する。 また、新事例(ケニア、クワレ県クワレ)では、上の事例と同時期に行われた同様の開発・保全プロジェクトを調査した。結果、観光地としての知名度の差が影響し、現在までの成果では上記事例に大きく劣ることが分かった。観光業はケニアにおいて多く用いられる開発の方法だが、それが万能ではないことが確認できた。今後は両者の比較を通じて観光業以外に便益還元を達成する方法がないのかを検討したい。 両事例の調査は、未だ論文という形に発展させるまでに至っていないが、野生動物保全と観光業、また地域住民の生業の関連を見る基本的な視座は今年度の調査から得られたと考えており、来年度には論文の形に仕上げたいと思っている。 先行研究レビューは予定どおりに進んでおり、その他についても投稿論文2本と学会発表1回を行った。申請者は去年度まで自らの研究内容を外部に向けて発表することがなかったが、今年度の発表の結果、これまで交流のなかった研究者とも議論を行うことができた。これは今後の研究を進める上でも大きな財産になると思う。
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