2007 Fiscal Year Annual Research Report
凝二次元有機導体における質量ゼロのディラック粒子系の理論研究
Project/Area Number |
07J00124
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
片山 新也 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 擬二次元有機導体 / ゼロギャップ状態 / スピン密度波 / 電荷不均化 / 局所磁化率 |
Research Abstract |
α-(BEDT-TTF)_2I_3(α-(ET)_2I_3)塩は単位胞に4個のBEDT-TTF分子をもつ3/4フィリングの擬二次元有機導体である。ブリルアンゾーンにある二つのフェルミ点の周りで質量ゼロの電子(ディラック粒子)が存在し、単層グラファイト(グラフェン)とは異なる特徴をもっている。本研究の目的はこのゼロギャップ状態における有機導体の性質を明らかにすることである。本年度はスピン密度波と磁気的性質について調べ、以下の研究成果を得た。 (1)三次元性の効果とスピン密度波 α-(BEDT-TTF)_2I_3塩は高圧、低温領域おける電子状態がまだ解明されていない。この電子状態を理解するため、ゼロギャップ状態の不安定性について調べた。エネルギーギャップがゼロのためバンド間の遷移が強く、エキシトンが形成されやすい状況となっている。伝導層間の電子のホッピングを考慮することによって、エキシトンのプロセスに起因した不整合な波数のスピン密度波が存在することを示した。この研究成果はJournal of the Physical Society of Japan(2008年77巻1号)に掲載された。 (2)局飯磁化率と電荷不均化 α-(BEDT-TTF)_2I_3塩は電荷不均化が広い圧力・温度パラメータ領域で観測されている。その一方で、BEDT-TTF分子の局所磁化率も単位胞にある4個の各分子で異なる。磁化率や核磁気緩和率を単位胞の各分子に対して計算し、電荷不均化との関係を調べた。フェルミエネルギー近傍の状態密度のふるまいから各分子の磁化率と電子数には正の相関があることを明らかにし、これまで謎であった実験結果を説明した。さらに、フェルミ点近傍の電子状態はグラフェンの場合と比較して新しい自由度を考慮した基底で構成されるため、特異な性質が出現することが判明し、この有機導体におけるディラック粒子の存在を理解するための手がかりを得た。この結果は日本物理学会第63回年次大会(2008年3月)で発表した。
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Research Products
(4 results)