2007 Fiscal Year Annual Research Report
レトロウイルスベクターにより遺伝子改変された樹状細胞を用いたがん免疫療法の確立
Project/Area Number |
07J00138
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鍋倉 宰 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 樹状細胞 / 免疫療法 / HER2 / がん免疫 / 乳がん / レトロウイルスベクター / トランスジェニックマウス / 遺伝子治療 |
Research Abstract |
マウス造血前駆細胞からレトロウイルスベクターGCDNsapにてHER2を導入したDCを作製し、この抗腫瘍効果を評価することを試みた。予防的モデルとして乳がんを自然発症するラットHER2トランスジェニックマウスに対しHER2導入DCを投与した結果、無がん期間が延長したことが確認された。この際、所属リンパ節へ効率よくDCを移入できる足裏注射群では、側腹部の皮下注射より強い抗腫瘍効果を発揮した。各投与経路により誘導されたHER2特異的免疫応答を比較した結果、HER2特異的CTL・Th1細胞により担われる細胞性免疫には差が見られなかったが、抗HER2抗体価は足裏注射群で高いことが証明された。以上から、この抗腫瘍効果の相違はHER2特異的体液性免疫の違いによることが示され、強い抗腫瘍効果を得るためには細胞性免疫のみならず体液性免疫の効率的な活性化が重要であることが証明された。更に、治療モデルにおけるHER2導入DCの治療効果を検証した結果、HER2導入DCは治療モデルにおいても治療効果があることが証明された。我々はGCDNsapの使用により、従来のレトロウイルスベクターの欠点を克服し(Nabekura T, et. al.Mol Ther,13;501-509,2006)、本研究によってHER2導入DCがんワクチンの有用性を証明した。よって本研究で紹介したHER2導入DC療法は十分に臨床応用可能であると考えられる。本研究の重要性の一つは、ラットHER2トランスジェニックマウスにおける免疫寛容を、HER2免疫応答で破り、強力な抗腫瘍免疫応答を誘導した点である。従って、臨床応用の際にオルソログ抗原を導入したDCを使用する戦略が有効であると考えられる。最も重要なのは、HER2導入DCが治療モデルにおいて治療効果を発揮した点である。現在まで乳がんに対してHER2ペプチドやペプチド添加DCを用いた症例に有効性が確認されていないことから、本研究で述べられたHER2導入DCは、乳がんに対する有望な治療法を提示したと考えられる。
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Research Products
(3 results)