2009 Fiscal Year Annual Research Report
小型霊長類コモンマーモセットES細胞を用いた効率的血小板分化誘導法の開発
Project/Area Number |
07J00162
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 朋子 (横尾 朋子) Kyushu University, 生体防御医学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | コモンマーモセット / ES細胞 / 血小板 / 分化誘導 / 遺伝子導入 / cDNAライブラリー / レンチウィルスベクター / ヒト胎児肝cDNA |
Research Abstract |
コモンマーモセットES細胞由来血球の高効率産生を最終目標として新規造血関連分子の探索を行った。前年度に実施した、新規造血関連分子の一次スクリーニングをもとに二次スクリーニングを行った。前年度に同定した候補遺伝子は、エリスロポエチン非依存的に増殖分化を促すものであった。生体内で実際に起きている赤血球造血において、赤血球前駆細胞であるCFU-Eから赤芽球まではエリスロポエチン依存的なステージであり、その後網赤血球、成熟赤血球は、エリスロポエチン非依存的なステージである。このことから候補遺伝子は網赤血球、成熟赤血球期の赤血球造血に関与する分子であることが予想できた。一次スクリーニングから得られた候補遺伝子について、それらの生体内血球分化における発現パターンをさらに詳しく解析するために、マウス胎仔肝臓を用いて二次スクリーニング実験を行った。まず候補遺伝子のマウスホモログを同定し、特異的なプライマーを設計した。次に、胎生12.5日目のマウス胎仔肝臓の造血幹細胞から成熟赤血球への各分化段階の細胞の採取を行った。各分化段階(造血幹細胞、BFU-E、CFU-E、赤芽球、成熟赤血球)の細胞の同定は細胞表面抗原マーカーCD45,Scal,c-Kit,CD71,Terl19を組み合わせて行い、各分画の細胞はセルソーターを用いて分離・採取した。それぞれの分画からRNA抽出ならびにcDNA合成を行い、qRT-PcR法にて候補遺伝子の発現パターンの解析行った。その結果、アポリポタンパク質ファミリーメンバーの一つをコードする、Apoa-1遺伝子の発現が、マウス胎仔肝臓造血幹細胞から成熟赤血球への分化過程で顕著に増大することを明らかにし、そのmRNA発現は成熟赤血球ステージにおいて造血幹細胞ステージの約350倍もの発現を認めた。さらに、免疫組織染色とELISA法によりタンパク質の発現解析を行ったところ、Apoa-1タンパク質はマウス胎仔肝臓においてc-Kit陽性の造血幹細胞ならびに造血前駆細胞ステージよりも、Terl19陽性の成熟赤血球において発現量が豊富であった。さらに、ヒト末梢血の最終成熟分化赤血球においてヒトAPOA-1遺伝子発現が認められた。よって、APOA-1はマウス、ヒトにおいて新規赤血球成熟マーカーであると結論付けた。APOA-1遺伝子の分化成熟促進能をさらに検討、応用することで、ES細胞からの高効率血球産生につながる可能性があり、本研究成果は大変意義深い。
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Research Products
(3 results)