2008 Fiscal Year Annual Research Report
17世紀後半のイタリアにおける協和音とその受容の理論の研究
Project/Area Number |
07J00172
|
Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
大愛 崇晴 Seijo University, 文学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 音楽理論 / 感覚論 / 音楽美学 / 西洋音楽史 / メンゴリ / ガリレオ / 17世紀 / イタリア |
Research Abstract |
西洋音楽理論の歴史において中心的な主題とされてきた協和音の問題について、17世紀後半のイタリアに焦点を絞って検討する本研究課題の2年目にあたる本年度は、前年度に引き続き、ピエトロ・メンゴリの『音楽についての考察』(1670年)の分析を継続して行った。メンゴリが17世紀科学革命期の機械論的自然観に則り、空気を粒子状物質と見なした上で、各音による空気粒子の鼓膜への打撃頻度の差異によって聴覚が音程を知覚するという生理学的構造を構想していること、そして、従来の音楽理論では計算能力が関わるために理性が介在する認識能力と見なされていた音程知覚をもっぱら感覚的認識に帰し、それゆえにメンゴリの理論は感覚的認識を対象とする学問として18世紀に構想された美学の基本概念を先取りしていることをこれまでに明らかにしたが、本年度はこれを踏まえ、より音楽実践と関わりの深い同書の旋律論に注目した。メンゴリは感覚独自の限定的な計算能力によって把握可能な音程から構成される旋律を良いものと捉える。それは、感覚によって明瞭に認識されるために明確な形象(=メロディ・ライン)として記憶に残るような旋律であり、その条件を満たすものとしての教会音楽の優越性が説かれる。 さらに、メンゴリの音楽論の特徴をより際立たせるために、彼に先立って機械論的自然観を採用しているガリレオの協和音論を検討した。それは現代の周波数による音の協和度の理解の先駆をなすものであるが、人間の内面的な認識作用については触れられていない。この点において、感覚的認識の問題を主題化しかメンゴリの独自性が明らかとなった。 メンゴリの音程知覚論に関する研究成果については、2008年10月に開催された第59回美学会全国大会において口頭発表を行った。また、音程関係を数学的論証によって合理的に考察する数学的音楽理論の16-17世紀イタリアにおける流れを本年度中に博士学位申請論文としてまとめることができた。
|
Research Products
(1 results)