2008 Fiscal Year Annual Research Report
国際社会における時宜にかなった法実現プロセス:法的安定性と正義実現の関係
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07J00176
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷口 めぐみ (栢木 めぐみ) The University of Tokyo, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 戦争賠償・戦後補償 / 回復(reparation) / 集団的不法行為救済 / 講和条約 / 事後救済請求権 / 国際法 / 国際人権法 |
Research Abstract |
本年度の研究ではおもに次の点に取り組んだ。 (1)平成20年9月にドイツ(ハイデルベルグ)で開催された欧州国際法学会での国際刑事法分科会では、刑事裁判での加害者処罰に限定せず、真実和解委員会の機能にも着目した過去の不正への総合的な取り組みが必要とされていることが確認された。このような学会動向を踏まえ、講学上の概念が総合的視座によって捉え直されてきた現象を米州人権条約制度での判例分析を通して明らかにした。金銭賠償や加害者処罰の他にも、被害者・遺族のための基金設立や医療サービスの提供、社会全般に再発抑止の波及効をもたらす記念碑建立や人権啓蒙活動、さらには国際法違反及びそれに伴う国際責任の自認や公式の謝罪など、多様な回復措置が同制度で創出、頻用されていることを「回復」概念の再構築として指摘したのが『講座・国際人権法第4巻』(近刊予定)所収の拙稿「米州人権条約制度における『回復』概念の展開」である。この論文は、重大な人権侵害の事後的救済で要請される国際人権法学上の「謝罪」と伝統的国際法上で従来からなされてきた国家間での「陳謝」の関係をとくに取り上げることで国際人権法学と一般国際法学の対話を試みたものである。 (2)研究目的に掲げた被害者救済のために要請される超時間的な正義実現の必要性と問題性の検討作業は次年度に引き継ぐ形で成果発表する。戦後補償の具体的事例を素材に、国際人権法や国際人道法でみられる被害者志向の動向、とくに被害者の補償請求権・事後的救済請求権の実体的及び手続的基盤形成の試みを取り上げ、この意義と問題性を国家間で締結した講和条約によってもたらされた法的解決・平和状態との関わりに触れながら明らかにする。
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Research Products
(1 results)