2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J00183
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笹川 麻子 (加藤 麻子) Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 日本古代史 / 律令制 / 文書行政 / 公式令 / 計会式 / 計会帳 / 勘会 |
Research Abstract |
計会制度とは、公式令に則って諸国・諸司が作成した計会帳を毎年太政官に提出し、太政官作成の計会帳と勘会することで、官庁間の文書授受が確認できるシステムである。従来の研究は、計会帳に記載すべき事項と現存する計会帳の分析を中心に、計会制度の主眼やその有効性を論じることに重点をおいてきた。一方で、令規定の簡略さに起因して、勘会作業に関する考察はほとんど無い。そこで本研究では、(1)令文から計会制度の目的・理念を明らかにした上で、実際の運用状況を確認する、(2)勘会作業によって何を確認し得るかという視角から、制度の目的を論じる、の2点を課題として考察を行った。律令の計会制度とは、官庁間の文書授受とともに、その文書に基づく各官司の行動や責任遂行の確認を目的とする。現存する出雲国計会帳は、文書の送付側と受領側の計会帳を照合して文書授受を確認するための記録、伊勢国計会帳断簡は、国衙が受領・送付する文書について行う文書処理・履行の記録である。両者の書式は大きく異なるが、両書式の計会帳がともに提出されることで、計会制度の目的は達成されたと言える。計会帳に記載されるのは、律令国家の人民支配や会計・財務に関わる特定の項目であり、計会帳の勘会による責任遂行の確認は、戸籍・計帳・正税帳などと同様、太政官による人民支配と財政把握の一環としての意味を持つ。なお、本研究は、公式令の分析を通じて、日本における律令文書行政の整備・実施に関する構想と目的を解明し、その上で現存する文書から実際の運用状況を検討するという研究目的に則して進めたものである。
|
Research Products
(1 results)