2007 Fiscal Year Annual Research Report
サーカディアンリズムの中枢を担う時計因子複合体の分子解剖
Project/Area Number |
07J00199
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉種 光 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | サーカディアンリズム / bHLH-PAS型転写因子 / CLOCK / BMAL1 / リン酸化 / タンパク質分解 / プロテアソーム / 転写調節 |
Research Abstract |
概日時計の分子発振システムにおいて、時計タンパク質CLOCKとBMAL1の複合体はE-boxを含む時計シスエレメントに結合して転写を活性化する。転写・翻訳された負の因子群は、CLOCK-BMAL1複合体を不活性化することにより自らの転写を抑制する。この負の因子群によるCLOCK-BMAL1複合体の不活性化機構の分子実態は謎に包まれているが、時計タンパク質の翻訳後修飾が極めて重要な役割を担うと考えられる。 そこで私は、この時計因子複合体を形成する構成因子の時刻依存的な変動をタンパク質レベルで把握することが、時計発振の真の理解に重要かつ不可欠であると考えた。この目的に向け私は、時計因子複合体の中枢因子であるCLOCKおよびBMAL1を認識するモノクローナル抗体を作製し、抗CLOCK抗体を用いた時計因子複合体の単離手法を確立した。この過程で、マウス肝臓の核内においてCLOCKとBMAL1が時刻依存的にリン酸化されていることを見出した。興味深いことに、BMAL1のリン酸化はE-boxの転写が活性化している時刻にピークを迎えるのに対して、CLOCKのリン酸化は転写が抑制されている時刻に亢進した。つまり、CLOCKとBMAL1は、互いに異なる位相で、低リン酸化状態と過リン酸化状態をサイクルしている。さらなる解析により、マウスの肝臓において、エクソン19を欠損しているCLOCK変異体が野生型CLOCKに比べて低リン酸化状態であり、細胞内蓄積量が大幅に増大していることが判明した。さらに、培養細胞においては、薬剤処理により内在性のCLOCKのリン酸化を強制的に元進させたところ、過リン酸化されたCLOCKはプロテアソームを介した分解に導かれた。以上の結果は、時計タンパク質へのリン酸化シグナルがタンパク質分解を介してE-boxの転写抑制に寄与している可能性を示唆している。
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