2008 Fiscal Year Annual Research Report
統計力学に基づく生化学反応ネットワークの解析とモデル化
Project/Area Number |
07J00209
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹本 和広 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | システム生物学 / 生命情報学 / 代謝ネットワーク / 極限環境微生物 / ネットワーク理論 / 進化 / フラボノイド |
Research Abstract |
本研究の目的は、生体ネットワークを統計力学的な視点から解析を行い、それを基に数理モデルを通してネットワークの形成機構を解明することである。本年度はまず、昨年度明らかにした生育温度による代謝ネットワークの構造差異について更に議論した。昨年度では生育温度による代謝ネットワークの構造変化を明らかにしたが、その起源は依然不明であった。そこで代謝ネットワークの構造をよく再現する数理モデルを構築し、構造差異の起源を議論した。結果として、進化イベントよって既存の反応経路に対してバイパスが出現することにより、この構造変化が起こることを見出した。生育温度が高い場合、そのような反応は淘汰される。逆に生育温度が低い場合、バイパスは選択される。このような環境の違いが構造差異をもたらすと結論づけた。この結果は、今後、生体ネットワークの進化や耐熱性の起源を理解する上で有効な知見になると考えられる。次に、植物における代謝物種間分布について議論した。従来、これは少ない代謝物を用いて議論されてきたが、近年のデータの蓄積により大規模な分布の議論が可能となった。ここでは植物に特有なフラボノイド(FL)に注目した。結果として、ある植物種がもつFL種数と、あるFLを共有する植物種数は不均一な分布に従うこと見出した。さらに数理モデルを構築しこの不均一な分布の起源を示した。更に、多くの植物に見られるFLの構造は特異的なそれよりも単純であることも見出した。この結果は、今後、植物におけるFL代謝の進化を理解する上で有効な知見になると考えられる。また、Songと共同でタンパク質の暴露傾向の予測も行った。ここではその指標となるHalf Sphere Exposure(HSE)の解析を行い、USE予測ソフトウェアの構築に関わった。
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