2007 Fiscal Year Annual Research Report
現代トルコにおける右派民族主義政党の思想と組織研究-国外での活動との関連で
Project/Area Number |
07J00216
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関口 陽子 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | トルコ / 政党 / 民族主義 / 中道左派 |
Research Abstract |
本研究は、現代トルコにおける右派民族主義政党の組織構造及び他の中道右派政党にも達するイデオロギー上の広がりを考察し、「中道右派」や「極右」といった概念の再構築を目的としている。また、右派に留まらず、同時代のトルコで政治潮流の主流を占めていた中道左派政党についても分析を加える。これはトルコに留まらず、他の中東及び西欧諸国における政党政治との比較の視座を提示するものである。本年度はその基礎研究として、民族主義政党におけるイスラームの扱いの変遷を論文にまとめた。これは、従来は世俗的であったと考えられてきた当該政党は、実はその結成当時からイスラームを重視していたこと、イスラームの扱いは年を経るごとに重視されてきていること、トルコの与党であるイスラーム系政党との差異は、世俗主義を導入したトルコの初代大統領観に見られること、を明らかにした。この論文は、現在与党であるイスラーム系政党と民族主義政党との支持層の重なりを考察する上で有用であり、世界的な潮流である極右の台頭において、そのイデオロギー的傾向を考察する一助ともなろう。 レバノンのベイルートで行われた、東京外国語大学アジア・アフリカ研究所主催の若手研究者発表会においては、1923年の共和国建国以来20年以上にわたって国家政党でありつづけた共和人民党(CHP)のイデオロギー変遷を取り上げた。同政党は1965年に「中道左派」宣言を行って右派から左派政党への方向転換を図ったが、本発表では同党にとっての「中道左派」とは、1950年代の英労働党及び北欧諸国の社会民主主義にインスピレーションを得たものでありつつも、その内容はそれらの国々のものとは全く異なることを示した。トルコの「中道左派」は1960年代に問題となっていた大土地所有制を解体する「土地改革」と結びつけられて語られていたこと、それ自体も共和国の国是として憲法に明記されているイデオロギーの範疇でのみ解釈が可能であり、当時勢力を伸ばしつつあったイスラームの政治利用を押さえ込むため、特に「世俗主義」との関連性が強調されていたこと、を明らかにした。これは非西洋の発展途上国における西洋イデオロギーの導入の一例として興味深いものであると言えよう。
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Research Products
(3 results)