2007 Fiscal Year Annual Research Report
明治初期における貨幣の多様性が市場経済・地域社会に与えた影響に関する実証的研究
Project/Area Number |
07J00262
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 延人 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 日本史 / 近代史 / 経済史 / 貨 |
Research Abstract |
(1)2007年7月と9月の二度に渡り名古屋に出張し、2007年7月公開の名古屋市市政資料館所蔵『伊藤次郎左衛門家史料』の調査を行った。伊藤次郎左衛門家は現在の松坂屋の創業家に当たる家で明治初期には名古屋藩の御用掛として活躍した。当史料を主に用いて「維新期名古屋の通商政策」を執筆、2008年1月16日に政治経済学・経済史学会(旧土地制度史学会)へ投稿済である(審査結果未着)。 (2)2008年2月に龍野・神戸に出張し、たつの市立龍野歴史文化資料館ならびに神戸市立文書館で史料収集を行なった。幕末維新期における播州、とくに西播は中小大名や飛び地が多く、領域の割拠性が高かった。そのため、地域通貨=藩札・私札の流通が盛んであった土地であり、維新期の貨幣史研究の上で特に重要であると考えた。だが、今回の史料調査での収集史料のみでは一つの論旨ある研究にまとめることは難しく、修士論文の改稿もしくは他の地域の史料と組み合わせて新規論文を執筆する予定。 (3)2008年3月に福岡に出張し、九州大学附属図書館付設記録資料館九州文化史資料部門(旧九州文化史研究所)が所蔵している『千原家文書』の調査を行った。千原家は「日田金」と呼ばれる地方金融資本の一つであり、近世中期から明治初期にかけて大名貸しなどを展開した巨商である。『千原家文書』の史料群は膨大で、今回閲覧・写真撮影できた史料はごく一部であるが、貨幣の多様性やその後の収束過程における変化が窺える貴重な史料群である。 (4)「木村長七文書」の史料翻刻を共同で行い、解題を執筆した。木村長七は古河財閥の創始者として知られる古河市兵衛の片腕として長く鉱山経営に携わった人物で、維新期には豪商・小野組のもとで働いていた。当史料は維新期から大正期の財界の実情を知る重要な史料である。『東京大学日本史学研究室紀要』(第12号、2008年度)に掲載予定。
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Research Products
(1 results)