2008 Fiscal Year Annual Research Report
明治初期における貨幣の多様性が市場経済・地域社会に与えた影響に関する実証的研究
Project/Area Number |
07J00262
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 延人 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 日本史 / 近代史 / 貨幣史 / 経済史 / 太政官札 / 藩札 |
Research Abstract |
1、名古屋市市政資料館所蔵『伊藤次郎左衛門家史料』の調査を行い、「維新期名古屋の通商政策」を執筆した。論文中では、明治維新期に通商司がとり行った通商政策の地方的展開を検討するとともに、名古屋における近世近代の連続性、維新政府と地方行政主体との乖離を実証した。政治経済学・経済史学会発行の『歴史と経済』(204号)に掲載予定である。 2、九州大学附属図書館付設記録資料館九州文化史資料部門(旧九州文化史研究所)が所蔵している『千原家文書』の調査を行い、豊後国日田(現大分県日田市)における貨幣流通の実態を分析した。千原家は「日田金」と呼ばれる地方金融資本の一つであり、近世中期から明治初期にかけて大名貸しを展開するとともに公金預金を運営し巨利を得た豪商である。維新期の日田では、多種多様な通貨が流入しつつも、日用取引に用いられる地域通貨の価値は比較的安定し、通説で言われているような幕末維新期における藩札価値の下落とそれに基づく経済停滞という現象は見られないと考えた。その成果の一部を、2008年11月9日「維新期日田の地域通貨流通」と題し史学会日本史部会(近現代)にて発表した。 3、石井寛治著『経済発展と両替商金融』(有斐閣、2007年)の書評を執筆し、投稿済みである。『史学雑誌』第118編第7号以降に掲載予定。
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Research Products
(2 results)