2007 Fiscal Year Annual Research Report
ターン・テイキングの認知神経機構:ハダカデバネズミの相互発声をモデルとした研究
Project/Area Number |
07J00285
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
吉田 重人 Chiba University, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 音声コミュニケーション / 言語起源 / 動物行動 / 神経科学 / ハダカデバネズミ / ターン・テイキング / 鳴き交わし / 社会関係認知 |
Research Abstract |
ヒトの会話において発話者が順に入れ替わる現象をターン・テイキングと呼ぶ。円滑なターン・テイキングは言語運用に際して必要不可欠であるが、その神経メカニズムは明らかとなっていなかった。これは主に、ヒトと比較検討を行うための生物モデルの不在に起因していた。 本研究では役割分担・順位制を有する真社会性げっ歯類:ハダカデバネズミの鳴き交わし行動は、ターン・テイキング研究の生物モデルとして最適な対象であることを示した。ハダカデバネズミに、ターン・テイキングに使われる音声(ソフトチャープ;以下SC)を呈示すると鳴き返し反応が誘発される。様々な順位に対応したSCを呈示すると、動物は相対的な順位関係に応じて鳴き返すか判断していることがわかった。また、複数のデバネズミに対してSCを呈示すると、呈示した音声に対して複数頭が鳴き返すことから、ターン・テイキングが3個体以上の間でも行われうることを明らかにした。これらの結果は、ハダカデバネズミのターン・テイキングが、順位制社会における個体間関係維持機能を持つことを強く示唆する。この種の機能を持つ音声は、「ボーカル・グルーミング」とも呼ばれ、言語の社会的機能との関連が指摘されているが、これまでは大型霊長類での報告があるのみであった。 ターン・テイキングを実現するためには、発声タイミングの制御・社会関係認知の双方を行う必要があり、これらは別々の脳部位で担われていることが予想される。社会関係認知への関連が予想される脳部位:前頭前皮質内側部の損傷を行い、損傷前後で、順位の異なる複数のハダカデバネズミとのターン・テイキングを比較検討した。結果、損傷前に観察された、相手との順位関係に応じた発声頻度の変化が、損傷後には消失したが、ターン・テイキング行動自体は損傷後も保持された。従って、当初の予測に合致した結果が得られた。
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[Journal Article] Antiphonal vocalization of a subterranean rodent, the Naked Mole-Rat (Heterocephalus glaber)2007
Author(s)
Yosida, S., Kobayasi, K.I., Ikebuchi, M., Ozaki, R., & Okanoya, K
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Journal Title
Ethology 113
Pages: 703-710
Peer Reviewed
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