2008 Fiscal Year Annual Research Report
ターン・テイキングの認知神経機構:ハダカテバネズミの相互発声をモデルとした研究
Project/Area Number |
07J00285
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
吉田 重人 The Institute of Physical and Chemical Research, 生物言語研究チーム, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ターン・テイキング / 話者交代 / ハダカデバネズミ / 音声コミュニケーション / 社会関係認知 / 前頭皮質内側部 / 言語運用能力 |
Research Abstract |
ヒトの言語使用に不可欠な基盤のひとつに、ターン・テイキング(TT):話者交代を円滑におこなう能力、がある。TTをするには、相手との社会的関係の認知、発声タイミングの制御、の双方を瞬時におこなう必要がある。ヒト以外の動物にとっても、双方向的な音声コミュニケーションに際して、TTを成功させることは重要である。TTをおこなう小型げっ歯目:ハダカデバネズミを対象として、その認知処理やタイミング制御に関わる神経機構の解明に取り組んだ。ハダカデバネズミは複雑な社会を形成して生活するげっ歯目で、個体間の順位関係に基づいてTTをおこなう。TTに用いられる音声の発声制御中枢の同定するために、関与が予想される、中脳水道灰白質周辺に微小電極を刺入して位置・強度を変えながら電気刺激し、音声が誘発されるか検討した。結果、ある種の発声や呼吸リズムの変調を誘発できたが、TTに使用される音声は誘発されなかった。価値判断や報酬予測への関与が知られている脳部位:前頭皮質内側部を損傷し、TTが変容するか検討した結果、損傷前に観察された順位関係に応じたTTの頻度の違いが、損傷後には消失することがわかった。この結果は、前頭皮質内側部が、TTにおける社会順位認知を担っている可能性を示している。同部位の損傷はヒトの言語使用にも影響を与えることが知られている。本研究をさらに発展させることにより、言語運用能力の神経基盤の解明につながる、有用な知見を得ることができるだろう。これまでに得られた成果を、1件の国際学会、および、4件の国内学会で発表し、一般向けの解説書を1冊刊行した。また、成果を原著論文としてまとめ、専門誌に投稿した。
|
Research Products
(6 results)