2007 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡相転移の究明を目的とした、動的測定法によるDPユニバーサリティの実験的検証
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07J00335
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 一将 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非平衡相転移 / 吸収状態 / Directed Percolation / 液晶電気対流 / ユニバーサリティクラス / ヒステリシス / 臨界現象 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
物理、化学、生物をはじめとする様々な自然現象に偏在する吸収状態転移の普遍性の実験的解明のため、液晶電気対流系における乱流間転移(DSM1-DSM2転移)の臨界挙動を調査した。まずは標準的な実験系で遂行可能な、一定電圧下の定常状態における静的臨界現象の測定、および電圧を急降下させた場合の動的臨界現象の測定を行った。その結果、独立な3つの静的臨界指数全てにおいて、実験的に得られた指数が理論的に予測されていたDirected Percolation(DP)クラスの指数と高精度で一致し、また電圧急降下に伴う動的臨界指数および普遍スケーリング関数もDPクラスのものと合致した。これによりDSM1-DSM2転移がDPクラスに属することが疑いなく証明された。これはDP転移が実在することを実験によって証明した初めての研究であり、長年の懸案に決着をつける重要な学術的成果である。さらに、本研究では単に実験的証拠を提示しただけにとどまらず、実在する現象でDP臨界挙動が観測されるために望ましい条件も指摘しており、今後の吸収状態転移一般の実験研究のためにも非常に意義ある成果であると言える。 また、本研究成果を用い、過去に観測されていたDSM1-DSM2転移の履歴現象をDP転移で説明することにも成功した。本研究では実験事実を理論・シミュレーションの両面で定量的に解明したのみならず、同じ履歴現象が他の吸収状態転移のクラスに関しても同様に成立すること、それが臨界現象の一側面であることをも実証している。これにより、履歴現象が普遍クラスを同定する手段としても有用であることが判明し、今まで吸収状態転移の観測が困難であった実験系にも活路を開くものと期待される。 以上のように、本研究によって、実在する現象における吸収状態転移の普遍性について実験的にも理論的にも大いなる進展が達成された。
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