2008 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡相転移の究明を目的とした、動的測定法によるDPユニバーサリティの実験的検証
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07J00335
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 一将 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非平衡相転移 / 吸収状態 / Directed Percolation / 液晶電気対流 / ユニバーサリティクラス / 臨界現象 / 国際研究者交流(フランス) |
Research Abstract |
物理、化学、生物をはじめとする様々な自然現象に偏在する吸収状態転移の普遍性を実験的に検証するため、液晶電気対流系における乱流間転移(DSM1-DSM2転移)の臨界挙動を調査した。一定電圧下の定常状態における静的臨界現象と電圧急降下による緩和に伴う動的臨界現象は昨年度の研究で検証済みであるため、本年度は、これとは独立な、1つの活性状態(DSM2)核が作るクラスターの拡がりに伴う動的臨界現象を測定した。 本実験では液晶対流中にDSM2核を人工的に生成する必要があるため、まずパルスレーザーを用いたDSM2核の人工生成技術を開発した。さらに、液晶の分子構造と光学応答の関連に関する化学的知見を念頭に、核生成のメカニズムを検討する実験を行った。 臨界拡がり実験は、以上の技術を用いてDSM2核を生成し、生じたクラスターの残存確率・体積・二乗半径を測定することにより行われた。その結果、3つの物理量から実験的に測られた動的臨界指数および普遍スケーリングは全て理論的に予測されていたDirected Percolation(DP)クラスのものと高精度で一致し、DSM1-DSM2転移が臨界現象の動的側面に関してもDPクラスに属することが疑いなく証明された。さらに、吸収状態転移で期待される臨界指数間のスケーリング関係式6つの確認も行った。本実験によりDPがもつ特殊な時間反転対称性であるrapidity対称性が初めて実験的に確認されたことになる。 また、昨年度行った電圧降下による緩和に伴う臨界現象の実験記録を再解析し、新たに乱流の局所的持続時間に対する臨界指数を測定した。その結果はDP数値モデルの値と一致しており、理論的に未解明の持続時間指数の普遍性に対して重要な実験事実の提示となる。 以上の実験により、昨年度に引き続いて、DPの膨大な理論的知見の核心部分に実験的立証を与える重要な成果を得ることに成功した。
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Research Products
(6 results)