Research Abstract |
アモルファス金属は不規則な原子構造を持ち,その機械的特性の発現メカニズムは,結晶性材料と本質的に異なる.近年,金属ガラスと呼ばれるガラス形成能が高く,バルク材としての生成が可能なアモルファス金属が見出されたことから,機械・構造材料としての実用化が期待されている.本研究では,原子個々の運動を原子間相互作用に基づき追跡する分子動力学法を用いて,局所変形機構と,アモルファス金属の低温での延性能に重要な役割を果たすせん断帯に着目し,解析を行った,Cu-Zrアモルファス合金モデルを構築し,その内部構造解析を行うと,幾何学構造や密度に不均質性が見られる.この内部構造は,組成によって大きく異なっており,幾何学的短距離秩序と化学的短距離秩序が複雑に組み合わさって形成されたと考えられる.一様な外部負荷応力に対して,数十原子程度の領域内での再配置による局所的な変形が生じることを確認した.また,自由体積とよばれる欠陥の量を表す変数を用いて構成式を構築し,アモルファス金属の高温での均一変形挙動について,MDモデルとの比較を行ったところ,MDモデルの応力の挙動は,定性的に自由体積に基づく構成式で記述できることを確認した.さらに,2次元の薄板MDモデルで見られたせん断帯の角度は,負荷軸に対して引張りでは45°より大きく,圧縮では45°より小さくなっており,せん断応力だけではなく,せん断帯に垂直な応力が影響していると考えられ,これは実験で報告されている破断面の角度と一致している.このことから,Mohr-Coulomb則がせん断帯の進展方向を決定していると考えられる.
|