Research Abstract |
平成19年度は,まず,中国社会文化学会2007年度大会(7月7日,於東京大学)にて,清代雍正年間の江南における銭貴(銅銭の対銀レート騰貴)に関する研究報告をおこなった。ついで,8月27日から9月7日,および11月18日から同月28日の2度にわたって,中国・北京市の中国第一歴史档案館において清朝時代の貨幣政策に関する档案史料(行政文書)『戸科史書』『内閣題本』『軍機処録副奏摺』『議覆档』等の調査を実施した。また国内では,筑波大学において,数次にわたって同じく清代档案の『宮中档朱批奏摺財政類』『宮中档乾隆朝奏摺』等の調査を行った。それらの史料調査の成果をもとに,『一橋経済学』2巻2号に論文「清代康煕後半の京師における貨幣政策と銭貴の発生」を発表,また,『満族史研究』6号に研究ノート「中国第一歴史档案館所蔵「議覆档」について」を投稿し掲載許可を得た。中国社会文化学会での報告,および『一橋経済学』所掲論文で考察を加えた銭貴は,本研究の主題である清代中期の貨幣史をとらえる上で起点となる現象であり,従来の研究ではほとんど看過されていた供給サイドの重要性を明示した。これにより,乾隆年間における制銭供給量の地域差と銅銭流通の混乱を政治史的側面から分析するための足掛かりが得られた。また,『満族史研究』所掲ノートは,これまで利用されることが皆無に近かった『議覆档』の内容を分析し,今後の自身の研究で同史料を活用していくための準備とするとともに,広く清代史研究者に便宜を供するものである。この他,満族史研究会第22回大会,第44回日本アルタイ学会,社会文化史学会第43回大会,明清史夏合宿2007等の学会に参加し,情報収集と意見交換に努めた。また,東洋文庫内国史院档研究会(隔週開催)に常時出席し,「崇徳三年档」等の満洲語史料の訳注作成に加わった。加えて1月からは,藤原書店「清朝の歴史を学ぶ会」に参加した。
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