2008 Fiscal Year Annual Research Report
βアミロイドの病的コンホメーションを標的としたアルツハイマー病治療薬の設計
Project/Area Number |
07J00403
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
村上 一馬 Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology, 東京都老人総合研究所, 特別研究員SPD
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイドβ / モリス水迷路 / 酸化ストレス / SOD / 抗体 / 老化 / 皮膚 |
Research Abstract |
1.Aβ42の病的コンホメーションを標的とした抗体の作成 アルツハイマー病(AD)の原因物質であるアミロイドβペプチド(Aβ42)は、高い凝集能と神経細胞毒性を有することから、本ペプチドを標的とした治療法の開発競争が世界中で行われている.本研究代表者らはこれまでに、Glu22およびAsp23残基でのターン構造を特徴としたAβ42の病的コンホメーションを明らかにした.本コンホメーションを標的とした抗体の作成を目的として、本ターンを化学的に安定化させ、毒性発現に必須な領域を含むAβの部分ペプチドを免疫した.得られたクローンの選別を、ターン形成能が異なる各種Aβ42変異体を用いて行ったところ、Aβ42の神経細胞毒性を顕著に阻害するモノクローナル抗体を得ることに成功した.本抗体でAD患者脳を免疫染色した結果、市販の抗体によって染色されない特徴的なアミロイド構造物を染色することを見いだした. 2.SOD欠損がアルツハイマー病モデルマウスの病態に及ぼす影響 Aβ42の病的コンホメーションの形成は、Aβ42自身がラジカル化することが引き金になるとされる.そこで、酸化ストレスに対する修復酵素の一つであるSODの欠損マウスとADモデルマウスを交配させて、病態への影響を調べた.その結果、SODが欠損することによって脳内へのAβの蓄積が顕著に増悪し、また空間学習記憶の異常が現れる時期が有意に早くなった.さらに、抗酸化剤を治療的に投与することで、Aβの蓄積を遅らせることに成功した.興味深いことに、AD患者の剖検脳のSOD量は、対照群に比べて低下していた.以上より、本疾患の発症において抗酸化機能の低下が重要であることがin vivoで初めて実証された. 一方、SOD欠損マウスは酸化ストレスが関与するヒトの老化様症状を示すことが知られており、本研究の過程で新たに皮膚の菲薄化が進行していることが見いだされた.本症状はコラーゲンの形成異常を介していることが明らかになり、これらは抗酸化剤によって治療的に改善された.
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