2007 Fiscal Year Annual Research Report
視物質解析に基づいた動物界第三の色覚系としてのクモ類色覚メカニズムの解明
Project/Area Number |
07J00435
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
永田 崇 Osaka City University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DCI)
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Keywords | ハエトリグモ / 色覚 / 視物質 |
Research Abstract |
ハエトリグモは優れた色覚を持ち、視細胞の受光部位(外節)が4層に積み重なった特殊な構造の網膜を持つ。この層構造はレンズが生じる色収差を補正するための構造と考えられているが、その生理的な意義についてこれまでの研究からは包括的な結論が得られていない。この色収差が関与する新規の色覚メカニズムを理解するために、本研究ではハエトリグモの色覚の分子基盤および色弁別のための神経ネットワークの解明を目的とする。 まず、クモ類における視物質のレパートリーと色覚の関連を調べる目的で、ハエトリグモに加え、色覚が発達していないオニグモのロドプシン遺伝子の単離を行った。その結果オニグモがハエトリグモ同様3種類の視物質を持つことが明らかとなり、ハエトリグモの高度な色覚が視物質の多様化のみならずハエトリグモ特有の網膜の多層構造といった独自のメカニズムに支えられていることが示唆された。 次にハエトリグモの視物質の一つ、Rh1について培養細胞での大量発現・精製を行い、極大吸収波長(536nm)を厳密に決定した。これはハエトリグモから電気生理学的に同定されている4種類の視細胞のうちの1種類が最大の感度を示す波長の値と良く一致するものであった。さらに、この培養細胞発現系を用いてRh1の変異体解析を行った結果、これまで不明であった節足動物視物質の可視光吸収に不可欠なアミノ酸残基(対イオン)の同定に成功した。培養細胞系を用いた一般的な無脊椎動物視物質の変異体解析はこれが初めての例であることから、今回の成果はハエトリグモを含む無脊椎動物の色覚の分子基盤の詳細な解析や脊椎動物の色覚との比較解析を可能とする重要なものである。
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