2007 Fiscal Year Annual Research Report
超高速分光法を用いた水和クラスターイオンの配向緩和と化学反応ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
07J00475
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山田 勇治 Kobe University, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 水素原子移動反応 / 超高速分光法 / アンモニア・メタノール混合クラスター / 超音速分子線 |
Research Abstract |
本研究は、超高速分光法を用いた水和クラスターイオンの配向緩和と化学反応ダイナミクスの理解を目標に、今年度は特に、アンモニア・メタノール混合クラスターの光励起後の超高速励起状態反応ダイナミクスの研究を行った。超音速分子線中に生成したアンモニア・メタノール混合クラスターをフェムト秒Ti:Sapphireレーザーの4倍波(197nm)で励起し、励起状態のダイナミクスを3倍波(263nm)によるイオン化を利用してプローブした。その結果、励起されたアンモニアクラスターは、非常に速い水素原子移動によってラジカル対([NH_4-NH_2])を生成し、その後ラジカル対の解離や溶媒脱離を伴って、NH_4(CH_3OH)_m(NH_3)_nクラスターが生成することがわかった。さらに、各ステップにおけるダイナミクスの速度の溶媒数依存性を、メタノールとアンモニアの溶媒数が異なるクラスターの時間発展から詳細に調べた。最初に起こる超高速水素原子移動反応はアンモニア同士でのみ起こり、一方、アンモニア-メタノール間では起こらず、[CH_3OH_2-NH_2]のラジカル対は生成しないことが分かった。この超高速反応の有無は、NH_4とCH_3OH_2ラジカルの安定性に由来し、また、水素原子移動反応で促進される互変異性化やECD(electron capture dissociation)における反応中間体として、アンモニウムラジカルが重要であることが示唆された。対して、メタノール分子は、これらの水素原子移動反応を阻害する可能性があることが分かった。これらのことから本研究は、水素原子移動によって誘起される様々な化学反応に関して、クラスターの溶媒分子の種類を変えることでその反応制御が可能であるという重要な情報を与えるものである。
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Research Products
(3 results)