2007 Fiscal Year Annual Research Report
富栄養化が造礁サンゴ群体による炭素固定に与える影響について
Project/Area Number |
07J00482
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 泰章 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | サンゴ礁 / 富栄養化 / サンゴ / 褐虫藻 / 有機物 / バクテリア / 光合成 / 栄養塩 |
Research Abstract |
造礁サンゴ群体による炭素固定機能について。近年深刻化するサンゴ礁生態系の富栄養化がどのような影響を与えるのかを把握するため、サンゴ群体かちの有機物排出過程と排出された有機物のバクテリアによる分解性を調査した。有機物排出に関する実験では、まず、直径数cmから10cmくらいの造礁サンゴ(A.pulchra)を石垣島(沖縄)の白保サンゴ礁において採取し、研究施設内の富栄養化させた水槽内で前培養した。栄養塩濃度はNO_<3->を約5μmoll^<-1>,PO_4^<3->を約0.3μmoll^<-1>に設定した。この水槽内の富栄養化環境下で、1〜14日の異なる期間サンゴ片を前培養した後、それぞれのサンゴ片をろ過海水中で、スターラーで撹拌しながら5時間培養し、培養前後における海水中の有機物濃度の差から、サンゴ片からの溶存態および懸濁態有機物(DOM&POM)の排出速度を求めた。その結果、栄養塩添加によってPOMの排出速度は大きく増加することが明らかとなり、その約80%は粘液や組織断片などのサンゴ由来有機物であることが推定された。DOM排出速度は、本実験の範囲内では有意な影響は見られなかった。次に、排出された有機物の分解を調べるために、バクテリアによる分解実験を暗条件下で行った結果、最初の週間でPOMの濃度は40%にまで減少し、4か月後の残存量は栄養塩添加をしなかった場合とほぼ同じであった。従って、サンゴ群体から排出されるPOMはバクテリアによって速やかに無機化される、または断片化によってDOM画分へ移行すると考えられる。DOMについても、POMと同様に最初の一週間まで濃度の減少が見うれた。これらの実験から、サンゴ礁における栄養塩濃度の増加は、サンゴ群体からのPOM排出を促進させることによって、サシ礁内の従属栄群集への有磯物供給量が増加するとことが示唆された。
|
Research Products
(6 results)