Research Abstract |
悲観的思考の受容度が低い対処的悲観者に対して,心身の健康を促進するための介入研究を行った。まず,質問紙調査によって介入対象者をスクリーニングし,41名のDP者から協力が得られた。彼らに対して,対処的悲観性の機能や,そのメリットとデメリット,さらにデメリットの軽減方法などが記載された心理教育的テキストを用いて,1ケ月にわたり郵送形式による4回の介入を行った。さらに,3ケ月ごとに計3回のフォローアップ調査を行った。その結果,最終的に31名から計7回分のデータが得られた。また,スクリーニング時に介入研究に対しては協力意思を示さなかった者に対して,フォローアップ調査の時期に合わせて再度質問紙調査を行い,7名が統制群として同定された。量的データの分析結果から,介入群において悲観的視思考に対する受容度に上昇がみられた。自尊心,本来感,対人満足感,感情に対する尊重性などに変化はみられなかった。しかし質的データの分析結果から,悲観的思考の受容が促進されたこと,新たな発見と課題の同定できたこと,他者との関係性に変化があったこと,現実場面で対処的悲観性の有効性を実感したこと,などが報告された。これらの結果から,心理教育的なテキストを用いた介入によって,対処的悲観者の悲観的思考に対する受容度を高めることができること,さらに心身の健康や対人関係にも望ましい変化が生じる可能性があることも示唆された。また,社会的な機能が保たれている悲観者であれば,楽観的にさせるという従来のアプローチだけでなく,悲観的思考を受容するというアプローチも有効である可能性が示せたことは意義があるといえよう。今後は,より効果の高い介入テキストを開発することや,ワークショップ形式などのより大規模な介入法の開発などが望まれる。
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