2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J00539
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
有馬 麻理亜 Kobe University, 人文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アンドレ・ブルトン / シュールレアリスム / 崇高 / 暗黒小説 |
Research Abstract |
当該研究は、アンドレ・ブルトンが提示した「崇高点」という概念と、古代から詩学、哲学、美学といった様々な分野で議論されてきた、「崇高」という概念を比較参照しながら、ブルトンの思想を一つの知の歴史に組み込むことを主要な目的としている。平成19年度の計画としては、「崇高点」と「崇高」に関する問題提起、「崇高点」発見以前のブルトンの思想の分析、「崇高の詩学」の理論と実践といった問題に取り組むことを目標とした。また、フランスへの資料招集渡航や研究成果を学会で発表することを計画した。 上記の計画にそって、「崇高点」の問題と伝統的な崇高の概念との違いを、「観念主義なき観念化」というキーワードを用いて論じ、1920年代から30年代にいたるブルトンの思想の変化を追った。特に重要な結果として、「崇高」の概念に影響を受けたロマン主義やゴシックといった文学に対する、ブルトンの強い関心に注目し、そこからブルトンと伝統的な「崇高」の概念の関連を明らかにすることができた。この内容を、日本フランス語フランス文学会秋季大会(2007年11月11日、関西大学)において、「アンドレ・ブルトンと崇高の美学-『暗黒小説』の影響をめぐって」という題をもとに発表した。この口頭発表の審査結果から、『フランス語フランス文学研究』、第93号の掲載に向けた,審査論文を書くことことが許可された。現在この論文は審査中である(審査結果は5月に発表)。一方、フランスでの資料収集により、ブルトンの書簡、彼が影響を受けた研究者の博士論文、さらに彼が所蔵していた書物のリストなどを参照した。中でもゴシック小説とサドの研究をしていたモーリス・エーヌとブルトンの書簡は、ブルトンのゴシック小説への関心を裏付ける確証となった。
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