2007 Fiscal Year Annual Research Report
減弱型長期シナプス可塑性の生理学的解析 〜長期記憶研究へのアプローチ〜
Project/Area Number |
07J00560
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
江頭 良明 Osaka University, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | シナプス可塑性 / 海馬 / 切片培養 / シナプス廃止 / 長期抑圧 |
Research Abstract |
本研究の目的は、2006年に篠田陽博士らによって発見された"繰り返しLTDによる長期シナプス弱化:LTD-repetition-Operated Synaptic Suppression"という現象(以下LOSSと呼称)の詳細な生理学的解析を行うことである。LOSSは記憶の座といわれる海馬の切片培養系で観察される現象であり、シナプスの廃止つまり神経回路の再編成を引き起こすことが知られているため、長期記憶の細胞メカニズムの一つであると期待されている。したがって、本研究の意義は、LOSSが長期記憶の細胞メカニズムであることを明確にし、長期記憶の分子機構解明に向けたモデル系を確立することである。 そのために本年度は、LOSSがタンパク合成依存的な過程であるかどうかを検討した。長期記憶と短期記憶の細胞レベルでの決定的な違いが新規タンパク合成の要求性にあるからである。まず、LOSS誘発のためのmGluR依存的LTD(mGluR agonistのDHPGにより引き起こす)がタンパク合成阻害剤であるanisomycinで阻害されるかどうかを検討したところ、mGluR-LTDの成立過程はタンパク合成に依存しないことがわかった。続いて、各LTD誘発時にanisomycinを添加することで、LOSSのタンパク合成要求性を検討した。その結果、LTD誘発の6時間以内のタンパク合成阻害がLOSS成立を抑制することが明らかになった。これらの結果、は、mGluR-LTDはタンパク合成に依存しないが、その繰り返しによって引き起こされるLOSSはLTD誘発時に合成されるタンパク質に依存していることを示しており、LOSSに見られるシナプス廃止は細胞内の積極的過程により駆動されることが示唆される。
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Research Products
(3 results)