2008 Fiscal Year Annual Research Report
減弱型長期シナプス可塑性の生理学的解析〜長期記憶研究へのアプローチ〜
Project/Area Number |
07J00560
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
江頭 良明 Osaka University, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | シナプス可塑性 / シナプス廃止 / 長期抑圧 / 海馬 / 培養切片 / p75 / proBDNF |
Research Abstract |
本研究の目的は、2006年に篠田陽博士らによって発見された"繰り返しLTDによる長期シナプス弱化:LTD-repetition-Operated Synaptic Suppression"という現象(以下LOSSと呼称)の詳細な生理学的解析を行うことである。LOSSは記憶の座といわれる海馬で観察され、シナプス廃止をともない神経回路の再編成につながる現象であるため、記憶の長期化メカニズムをin vitroで解析するためのモデルになると考えられる。 昨年度、LOSSはタンパク質合成を必要とする現象であることを明らかにした。そこで本年度は、どのようなタンパク質が合成され、どのようなシグナルが働くことでLOSSが成立するのかというLOSSの成立メカニズムに迫る問題に取り組んだ。注目したのが、脳由来神経栄養因子(BDNF)の前駆体proBDNFとその受容体p75によるシグナルである。以前は機能を持たない単なる前駆体と考えられていたproBDNFであるが、近年、p75受容体を介してアポトーシスやシナプス廃止に関わるという知見が出てきてからである。そこでまず、LOSS誘発のための各LTD刺激の時にp75受容体の機能阻害抗体を投与する実験を行ったところ、シナプス抑圧が阻害されることがわかった。続いて、proBDNFとp75の発現量がLTD刺激によってどのように変化するかを調べたところ、proBDNFは1回のLTD刺激でも増加していたが、p75はLOSSを引き起こす3回のLTD繰り返し刺激のときのみ有意に増加していた。また、発現量増加の時間経過はタンパク合成依存性が見られた時間枠と一致していた。これらの結果は、LOSSという現象がproBDNF-p75経路のシグナルを介していることを支持している。
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Research Products
(3 results)