2009 Fiscal Year Annual Research Report
減弱型長期シナプス可塑性の生理学的解析~長期記憶研究へのアプローチ~
Project/Area Number |
07J00560
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
江頭 良明 Osaka University, 大学院・生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | シナプス可塑性 / シナプス廃止 / long-term depression(LTD) / 海馬 / 脳組織培養 / 脳由来神経栄養因子前駆体(proBDNF) / p75 neurotrophin receptor |
Research Abstract |
本研究の目的は、2006年に篠田陽博士らによって発見された"繰り返しLTDによる長期シナプス抑圧:LTD-repetition-Operated Synaptic Suppression"という現象(以下LOSSと呼称)の詳細な生理学的解析を行い、その機構解明を目指すことである。LOSSは記憶の座といわれる海馬で観察されること、またシナプス廃止という構造的変化をともなうことから、記憶の固定化メカニズムをin vitroで解析するためのモデルになると期待されている。 一昨年度までの研究により、LOSSの成立には各LTD誘発の6時間以内のタンパク質合成が必要であることがわかっていた。そこで次に、どのようなタンパク質の新規合成がLOSS成立に重要なのかを検討してきたところ、脳由来神経栄養因子の前駆体(proBDNF)とその受容体であるp75NTRの発現量が、LTD後6時間という時間枠で増加していることがわかってきたため、このproBDNF-p75NTRのシグナル経路に注目することにした。proBDNFは、以前は生理的機能をもたない単なる前駆体とされてきたが、近年、アポトーシスやシナプス廃止を引き起こすことが示されている。まずは昨年度に引き続き、p75NTRの阻害抗体がLOSSの成立を機能的にも形態的にも抑制することを実証した。さらに、海馬切片培養に外から投与したproBDNFがp75NTRの活性化を介して、LOSSと類似の長期シナプス抑圧とシナプス廃止を引き起こすことを明らかにした。これらの結果は、繰り返しLTD誘発によって、proBDNFの合成・放出が亢進して、p75NTRのシグナルが活性化されることでLOSSというシナプス廃止をともなう可塑性が生じることを示している。
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Research Products
(3 results)