2008 Fiscal Year Annual Research Report
超広帯域分光法による無機酸化物ガラスのガラス転移ダイナミクスに関する研究
Project/Area Number |
07J00574
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松田 裕 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アルカリホウ酸塩ガラス / ガラス転移ダイナミクス / ボソンピーク / 温度変調型DSC / ラマン散乱 / ブリルアン散乱 / 中性子非弾性散乱 / 低温熱容量 |
Research Abstract |
初年度である19年度では,リチウムホウ酸塩ガラスを題材として,ガラス転移点近傍のmHz帯域に相当するスローダイナミクスである構造緩和の性質を評価し,また,ブリルアン散乱法を用いてギガ(G)Hz帯域のフォノン物性を観測し,系の弾性的性質の変化を調べた。 初年度の成果を受け,2年目である20年度は以下の2点に取り組み成果を得た。 (1)ドープするアルカリ金属元素を変えたホウ酸塩ガラスのアルカリ種依存性 ドープする元素をLi→Na→Kと変化させ,それぞれの組成において弾性的性質の変化を追跡した。添加するアルカリ金属酸化物が10mol%までは大きな変化は得られず,その後,大きなアルカリ種依存性を示すことを見いだした。ホウ素の配位数変化と架橋・非架橋酸素が複雑に絡み合った中距離構造の変化に起因すると考えられる。 (2)THz帯域ダイナミクスであるボソンピークの組成依存性 同位体置換したリチウムホウ酸塩ガラスを対象として,中性子非弾性散乱・低温熱容量測定・ラマン分光法を組み合わることにより,THz領域に観測されるガラス状態に起因する低エネルギー励起(ボソンピーク)の組成依存性を調べた。組成が変化するとボソンピークの形状は大きく変化するが,ピーク波数(エネルギー)・ピーク強度を用いた規格化を施すと,同一のマスターカーブに乗ることを見いだした。系の構造は系統的に大きく変化するにも関わらず,スケーリング可能であるということは,ボソンピークが「ガラス状態」の普遍的現象であることを示唆し,過剰状態密度をある何らかの普遍性をもつ可能性を提起するものである。次年度では振動状態密度やアルカリ種依存性など詳細な解析を行う予定である。
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Research Products
(23 results)