2007 Fiscal Year Annual Research Report
種々のルイス酸を用いた新規なリビングカチオン重合開始剤系の開発とその機構解明
Project/Area Number |
07J00602
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金澤 有紘 Osaka University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | リビング重合 / カチオン重合 / ルイス酸 / 金属酸化物 / 不均一系触媒 / ビニルエーテル / 添加塩基 / アルコール |
Research Abstract |
本研究では,これまで重合の制御・進行が困難であったモノマーに有効な系の開発と,個々のルイス酸の性質に基づいて重合挙動を説明することを目的とし,様々なルイス酸を用いてのリビングカチオン重合開始剤系の開発・設計を行う。今年度は,これまでリビング重合が達成されていないハロゲン化金属,また種々の金属酸化物を触媒として用いたビニルエーテルの重合の制御を検討した。 まず,アルキルビニルエーテルのカチオン重合において,これまで検討したほとんどのハロゲン化金属ではエステル・エーテルなどの弱いルイス塩基を用いることが重合の制御に重要であったが,五塩化物NbCl_5, TaCl_5ではルイス塩基ではなく特異的に第四級アンモニウム塩を用いることで重合が制御できた。開始・生長末端の炭素-塩素結合を活性化して生成する六塩化物アニオンの安定性の関与が示唆される。一方,同じ五塩化物であるMoCl_5では上記のいずれも重合の制御に有効ではなかったが,開始種として従来からよく用いられるモノマーの塩化水素付加体の代わりにメタノールを用いることで,ルイス塩基存在下重合がリビング的に進行した。さらに種々の金属塩化物について,メタノールを開始種として用いて重合を検討したところ,長寿命生長種が生成した系,重合が全く制御できなかった系,重合が進行しなかった系に分類できた。中心金属の親酸素性・親塩素性の大きさのバランスが重合挙動に影響しており,親酸素性の大きな金属塩化物はメトキシ基と配位子交換して系中でHClを生成し,同時にMoCl_5などではルイス酸性も適度に調節されることで重合が制御されたと考えられる。 また,様々な金属酸化物が不均一系でのリビングカチオン重合触媒として有効であることを明らかにした。α-Fe_2O_3,Fe_3O_4では弱いルイス塩基を用いることで,Ga_2O_3,In_2O_3では弱いルイス塩基とごく少量の第四級アンモニウム塩などを併せて用いることで重合が制御された。
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