Research Abstract |
本研究では,重合の制御・進行が困難なモノマーに有効な系の開発と,ルイス酸の性質と重合挙動の関連性を調べることを目的とし,様々なルイス酸と開始種・添加物を組み合わせてのリビングカチオン重合開始剤系の設計を行う。今年度は,アルコールを開始種とする種々のルイス酸を用いた重合系の設計と,その機構とルイス酸の性質の関連性の解明,また金属酸化物や硫酸塩を触媒として用いた重合について検討した。 メタノールを開始種とし,弱いルイス塩基存在下(エステル・エーテル)において様々な金属塩化物を触媒としてビニルエーテル(VE)のカチオン重合を行ったところ,リビング重合が進行した系,重合は進行したものの制御されなかった系,重合自体進行しなかった系,と3つのタイプに分かれた。これは,今回検討したほぼ全てのルイス酸によりリビング重合が進行する,VEのHCl付加体を開始種に用いた系とは全く異なる挙動であった。重合反応中の^1H NMR測定により,リビング重合が進行するNbCl_5などを用いた系ではメタノールのメトキシ基と金属塩化物の塩素原子が交換し,系中でHClが生成してこれが真の開始種となり,炭素-塩素結合を生長末端として重合が進行していることが分かった。加えてZrCl_4などでは,そのような炭素-塩素結合と,アルコール由来のアセタール結合の両方を生長末端とする,これまでにない機構でリビング重合が進行していることも明らかとなった。GaCl_3など重合が制御されない系では,交換反応は起こらず,アセタール末端のみで進行していた。このようなルイス酸による重合挙動の違いは,中心金属の親酸素性・親塩素性の大きさのバランスに基づいていると考えられる。 様々な金属酸化物を用いた系では,重合機構を明らかにすることを目的とし,様々な条件(添加物の種類,触媒量,開始種量など)での重合を検討した。また,硫酸鉄(II)を用いた立体規則性カチオン重合を,様々な添加物存在下で行い,その制御能の向上を検討した。
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