2009 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性FePtナノ微粒子を用いたスピンデバイスの開発
Project/Area Number |
07J00665
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
デルモ MP Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 大きな磁気抵抗効果 / 空間電荷効果 / シリコン |
Research Abstract |
本研究では、シリコンに高電場を印加した時に生じる空間電荷効果に注目し半導体における磁気抵抗効果を検証した。実験方法としては、キャリア密度の低いシリコンを用いて「金属/シリコン/金属」構造を持つデバイスを作製し、磁気伝導特性を測定した。空間電荷効果とは、半導体のような自由に動ける電子が少ない物質に大量の電子が注入された場合、内部に一様でない電場が生じ、電子が互いにクーロン斥力を及ぼしあって伝導するようになる現象である。空間電荷効果では、通常のオームの法則とは異なる電気伝導現象が起こり、電流が電圧の二乗に比例する。これをモットーガーネーの法則という。このような状況下においては、シリコンの電気抵抗が磁場によって大きく増大することを発見した。例えば、磁場3テスラにおけるシリコンの抵抗は、磁場が無い状態に比べて、25ケルビンにおいて約100倍、室温においても約10倍以上になる。しかも、その磁気抵抗は印加磁場に対して線形的な依存性を示す。つまり、磁気抵抗は高磁場領域において飽和しない。さらに、この研究では、観測された大きな磁気抵抗効果は、空間電荷効果をもたらす準中性の破れによって説明できることを提唱した。この場合、シリコンに注入された電子を補償するのに十分な量の伝導電子が存在しないため、注入電子が蓄積する。その結果、シリコン中のキャリア密度と電場に不均一性が導入される。この伝導領域において、電子の運動は互いに相関するようになり、磁場に依存するようになる。この場合、磁場によるローレンツカが電子の軌道に大きく影響を与えるため、これによって生じるホール電場は自由電子モデルが記述するホール電場と異なる。このように、本研究では、空間電荷効果によって誘起される大きな磁気抵抗効果を検証することにより、半導体において生じる大きな磁気抵抗効果に新しい伝導メカニズムが導入された。そのため、この実験研究は、基礎研究として非常に重要であり高く評価される。
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Research Products
(7 results)