2009 Fiscal Year Annual Research Report
抗菌ペプチドの生物活性を増強するペプチドエピメラーゼの探索と光学異性化機構の解明
Project/Area Number |
07J00716
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
荒川 健佑 Tohoku University, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 光学異性化 / ペプチドエピメラーゼ / D-アラニン / 乳酸菌 / 抗菌ペプチド / バクテリオシン / ガセリシンA / ロイテリシン6 |
Research Abstract |
Lactobacillus gasseri LA39およびLb.reuteri LA6は、アミノ酸配列が相同のバクテリオシン「ガセリシンA(GA)」および「ロイテリシン6(R6)」を生産する。GAとR6はそれぞれ2および1残基のD-Alaを構成アミノ酸として含み、その違いが両者の抗菌特性の差異を生むと考えられている。GAとR6では、翻訳後にL-Ala残基からD-Ala残基へ光学異性化が起きていると示唆され、その変換を触媒する光学異性化酵素(ペプチドエピメラーゼ)が存在すると推定されている。本研究では、両株に存在するペプチドエピメラーゼ遺伝子を同定し、GAとR6における光学異性化機構を明らかにすることを目的とした。 昨年度までの研究により、LA39株におけるペプチドエピメラーゼ遺伝子は、プラスミドpLgLA39上のGA生合成関連7遺伝子gaaBCADITEのいずれかと推定された。しかし、LA6株のプラスミドpLrLA6においてもgaaBCADITEと同一の配列が確認され、GAとR6の差異を生む因子(ペプチドエピメラーゼ遺伝子)がプラスミド上に存在しないことが強く示唆された。そこで本年度は、GAとR6におけるD-Alaの存在および両者の同一性/相違性を再確認するために、両者をHPLCにより従来以上に高度精製することを試みた。その結果、GAとR6は従来の見解とは異なりD-Alaを含まない同一の分子であると見出され、両者において翻訳後の光学異性化は起きていないことが明らかとなった。 以上の成果は2010年のLetters in Applied Microbiology誌に報告した。本研究では、ペプチドエピメラーゼ遺伝子の同定やペプチド光学異性化機構の解明を行うことはできなかった。しかし、今まで難しいとされてきた疎水性バクテリオシンのHPLC精製を実現し、バクテリオシン(試料)の高度精製の重要性を再認識させる有意義な知見であったと考えている。
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