2007 Fiscal Year Annual Research Report
量子補正を考慮に入れたインフレーション期におけるゆらぎの生成シナリオの構築
Project/Area Number |
07J00720
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
浦川 優子 Waseda University, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | インフレーション / 宇宙背景輻射 / Stochastic gravity / 非線型効果 / 密度ゆらぎ / 重力波 / 赤外発散 |
Research Abstract |
インフレーションシナリオは、ビッグバン宇宙論では説明できない宇宙の構造の起源を説明することが可能な非常に優れたシナリオであるが、今なお、具体的なインフレーションモデルについては不明な点が多い。 その理由は、以下の通りである。インフレーションモデルを明らかにする上で現在もっとも有用な方法は、各インフレーションモデルが予言するゆらぎの線形解析を行い、宇宙背景輻射の観測結果と比較することである。しかし、線形解析の範囲内では、多くのインフレーションモデルが、観測結果と整合的であるため異なるインフレーションモデルを区別できていない。したがって、非線形の効果まで考慮した解析を行うことにより、より多くの情報を得る事が重要となる。そこでまず、インフレーション期におけるゆらぎの非線形的な成長まで記述することが可能な Einstein-Langevin方程式を、解析を行う上で有用な表式に定式化した。 次にこれを用いて、インフレーション期に生成される非線形のゆらぎの解析を行った。特に、非線形効果として、スピン0のモードである密度ゆらぎと、スピン2のモードである重力波に対する1ループ補正の計算を行った。 その結果、密度ゆらぎに対するループ補正は長波長の極限で発散し、長波長側でカットオフをいれないと有限な量が得られないことがわかった。一方、重力波に対するループ補正にはこのような発散はみられなかったが、近い将来観測が期待される程度の非線型効果は見られなかった。 また、ループ補正を議論する際に、現在までに観測可能でない宇宙の領域に対して仮定がされていたが、この仮定をせずに、観測可能な量のみを用いて議論すると、密度ゆらぎに対するループ補正にも赤外発散はみられず、有限の量が得られることを示した。
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Research Products
(5 results)