2007 Fiscal Year Annual Research Report
女房日記の系譜と特質に関する研究-『御湯殿上日記』を中心にして-
Project/Area Number |
07J00722
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
北上 真生 Kobe University, 人文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 女房日記 / 古記録 / 日記 / 中世文学 / 近世文学 / 宮廷文化 / 有職故実 |
Research Abstract |
女官制度を含めた朝廷運営の組織実態を見据えつつ、禁中女官である大典侍・長橋局・大御乳人の記録を比較し、取分け『御湯殿上日記』を継承して長橋局によって物された『長橋局日記』(宮内庁書陵部蔵・函号459-103)に照準を合わせて検討を加えた。朝廷の口向(勝手向き)に関しては、「禁裏附役人令條」に見える如く、禁裏附(幕臣)と長橋局によって取り仕きられていた。長橋局は、口向の出納管理・会計事務を専門とする執次をはじめとする口向諸役人(廷臣・幕臣)を配下として、実務に当たらせていた。従って、長橋局による記録は、献上品や下賜品について詳細を極め、職務に則した「出納帳」的な性格が強いように思われる。また、大典侍の記録には、進献など勝手向きに関するものについて「長橋殿御とめに委し」と長橋局の記録に譲られている。さらに、長橋局の記録は配下の執次による記録によって補完されるという一種の重層構造が見られる。幕府の制法によって長橋局の職権が保証されるに伴って、それに拠った職務遂行の記録も制度化され、視点も勢い幕府に向けられるに至ることを明らかにした。そして、近世期の女房記が、主人と主家の慶祝事などの情況を通して繁栄を記録的に現出するという文学史の女房日記概念と単純には重ならない相貌を見せ、むしろ、女房の職責に拠った職掌上の記録・業務日誌的な性格を強く持つものであることを導き出した。
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Research Products
(1 results)