2008 Fiscal Year Annual Research Report
超新星残骸に残る恒星の噴出物のX線による観測と、それに基づいた恒星進化の研究
Project/Area Number |
07J00747
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
勝田 哲 Osaka University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | X線天文学 / 超新星残骸 / チャンドラ / Vela Jr. / Kepler / SN1006 / Tycho |
Research Abstract |
超新星残骸の膨張率の測定は、残骸の年齢、進化の段階、周囲の密度、距離と言った根本的なパラメータに制限を与えるので大変意義深い。しかし、測定には膨張が判るだけの十分な時間間隔と優れた空間分解能が必要である。そのためこれまでは、研究の歴史が長く、また望遠鏡の性能の良かった可視光と電波のみによって測定されてきた。X線波長域では、試みはあったが必ずしも確実な測定とは言えない状況であった。この状況を打破したのは、1999年に打ち上げられた空間分解能の非常に優れたアメリカのChandra X線天文衛星、それにはやや劣るがヨーロッパのXMM-Newton X線天文衛星である。現在、それらの衛星が打ち上げから10年経ち、超新星残骸膨張率の測定が可能な時期を向かえている。我々は世界に先駆け、Vela Jr.,Kepler,SN1006,Tycho超新星残骸の膨張率をX線で測定した。その結果、Vela Jr.については、年齢と距離がこれまで考えられていたよりもそれぞれ2倍、4倍以上大きいと推定できた。また、Keplerについては、残骸の広がり方が非等方であることを明らかにし、残骸周囲の密度分布が非一様であることを明らかにした。SN1006についてはX線では初めて残骸が広がる様子をとらえ、それをもとに北東端での密度を推定した。Tychoについては、距離を初めて確かな方法で推定することができた。これらの結果は、4本の論文としてまとめ、3回の国際会議で報告した。
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