2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト脳内の随意運動抑制過程に関する神経ネットワークの解明
Project/Area Number |
07J00860
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中田 大貴 Waseda University, スポーツ科学学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 反応抑制 / Go / No-go / 機能的MRI / 事象関連電位 / No-go |
Research Abstract |
本年度は、脳内の運動抑制に関わる神経ネットワークの一端を明らかにするために、事象関連型fMRIを用い、運動抑制過程で脳血流が増大するのではなく、反対に血流が下がる脳部位を検討した。運動抑制過程を検討する際の課題として、体性感覚刺激によるGo/No-go課題を行なった。実験課題は、動作Go/No-go課題と計数Go/No-go課題の2つを行ない、Go刺激(左手正中神経)ならびにNo-go刺激(左手尺骨神経)は50%:50%で、呈示された。その結果、2つの課題において、No-go刺激時に上前頭回(SFG)(ブロードマン8野)の脳活動の血流が下がることがわかった。この脳部位は「ボタン押しをしない」「数を数えない」といった際に、共通して脳血流が下がる部位であることを示した。その詳細な機序については不明であるが、No-go刺激時に血流が増加する背外側前頭前野(DLPFC)、腹外側前頭前野(VLPFC)の部位と関係があると推察される(Nakata et al.2009, Neuroscience Letters)。 またその他に、事象関連電位を用い、痛覚刺激によるGo/No-go課題を行った。これまでの事象関連電位の研究では、No-go試行時中においてのみ特異的な電位成分が誘発されることがわかってきた。この電位は、「No-go potentials」と呼ばれ、No-go刺激が呈示された後、約200~300msで記録される陰性電位(N2成分)と約300~600msで記録される陽性電位(P3成分)の2つがある。また、前頭部を中心とした電極において明瞭に大きな振幅を記録するという特徴がある。これまでの先行研究では、視覚、聴覚、体性感覚刺激を用いたいずれのGo/No-go課題においても、No-go potentialsが記録されることがわかっていたが、本実験によって痛覚刺激のGo/No-go課題を用いた際も同様のNo-go potentialsが記録されることが明らかとなった。このことから、運動抑制過程は、刺激のモダリティーに関係なく、共通の神経活動を反映しているものと考えられる(Nakata et al.2009, NeuroReport)。
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Research Products
(8 results)