2009 Fiscal Year Annual Research Report
カリウム漏洩チャネルによる神経回路構築制御機構の解明
Project/Area Number |
07J00863
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阿部 遥 Kyoto University, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 小脳顆粒細胞 / 活動電位 / 神経回路 |
Research Abstract |
申請者は前年度までに、小脳顆粒細胞初代培養系を用いて、活動電位が顆粒細胞の成熟を促進することを明らかにした。今年度は、活動電位が顆粒細胞の成熟を制御するメカニズムを詳細まで明らかにした。まず、活動電位の発生を制御する細胞膜上の現象を様々な阻害剤を用いて探索した。その結果、シナプス前細胞から放出された神経伝達物質によるグルタミン酸受容体の活性化と活動電位による電位依存性カルシウムチャネルの活性化が顆粒細胞の成熟に必須であることを明らかにした。次に、電位依存性カルシウムチャネルの活性化に伴うカルシウム流入が、どの細胞内シグナル経路を活性化するかを様々なシグナル経路阻害剤を用いて探索した。その結果、ある2つのリン酸化酵素の活性化が顆粒細胞の成熟に不可欠であることを明らかにした。さらに、顆粒細胞の成熟を制御する転写因子を同定するために、発達中の生体小脳サンプルでマイクロアレイ解析を行い、いくつかの候補転写因子を選別した。これら候補転写因子を1つずつRNAi法でノックダウンしていき、ある1つの転写因子が顆粒細胞の成熟を制御していることを見出した。また、この転写因子は成熟に重要なリン酸化酵素によってリン酸化されると活性が増大することも明らかにした。最後に、成熟を制御するこの転写因子は共役因子をスイッチングすることで未成熟遺伝子を抑制しつつ成熟遺伝子を発現させている可能性を示唆するデータを得た。以上より、申請者はこれまで殆ど知られていなかった神経細胞の成熟の一連のメカニズムを明らかにした。特に、神経細胞の成熟はある一つのマスター転写因子によって制御されていることを明らかにした。この成果は、神経細胞がどのようにして機能的な回路を構築するのかという、神経科学における重要な課題の解明の第一歩となり得る重要な発見である。
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