2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J00877
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅野 倫子 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 読み / 文処理 / 単語認知 / 校正読み / 誤字検出 |
Research Abstract |
文(文脈)は複数の単語から成り立つため、文脈理解のためには構成単語を処理する必要がある。しかし一方で、経験的にも、先行研究からも、読みの処理の効率化のため、文脈から単語を予測しながら読むことが知られている。文の読みにおける単語と文脈の処理の関係を明らかにすることは、読みのメカニズムを解明する上で重要である。平成19年度は、文脈に合わない単語(誤字)を含んだ文を短時間見せ、誤字の部分の単語が何であったかを選択式で回答させるという実験により、文の読みの初期段階における処理について検討した。実験の結果、誤字について回答する際は、正字について回答する際よりも成績が悪く、また実際に文中に存在した誤字の代わりに、回答の選択肢の中の文脈に適合する単語を誤って選ぶ傾向が強く見られた。このことは、文の処理の初期段階の時点ですでに、単語の認知に文脈が強く影響し、個々の単語の処理よりも文脈の処理のほうが優先されることを示唆する。またそのとき、主に内容語(名詞や動詞、形容詞など、単体で意味内容を持ちうる語)の情報に基づいた粗い文脈処理がなされることや、文法的な整合性よりも単語同士の意味的な連関の存在が大きな影響を及ぼすことを示す結果も、一連の実験により得られた。これらは日常生活において、誤字や"てにをは"の間違いがあっても気付かず文章を「正しく」読んでしまいがちであったり、文面に一瞬目を留めただけでも内容がなんとなく分かったりするという経験とも一致するものである。一連の研究成果はThe joint meeting of the ExPerimental Psychology Society and Psychonomic Society(Edinburgh,UK)、日本基礎心理学会第26回大会、第4回「注意と認知」合宿研究会にて発表し、日本基礎心理学会では優秀発表賞を受賞した。
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Research Products
(4 results)