2008 Fiscal Year Annual Research Report
キャビティーリングダウン法と質量分析法を組み合わせた新しいエアロゾル研究
Project/Area Number |
07J00880
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
江波 進一 Nagoya University, 太陽地球環境研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | エアロゾル |
Research Abstract |
エレクトロスプレーイオニゼーション質量分析法(Electrospray ionization mass spectrometry,ESMS)を応用し,液体エアロゾルと反応性気体との不均一反応を測定する装置を開発した。この手法は数μmの粒径を持つ初期液滴の表面部分の組成を調べることができる。筆者はこの原理に注目し,数μmの粒径を持つ初期液滴に反応性ガスを噴霧できるようにESMSを改良し,新しい不均一反応開発装置を開発した。噴霧液滴と反応性ガスのオーバーラップ時間により計算される本装置の反応時間スケールは数ミリ秒である。筆者は海塩粒子中に含まれるヨウ化イオンやSO_3^<2->,S_2O_3^<2->イオンが気体オゾンと反応することを見出し、SO_3^<2->とO_3(g)の反応の速度論的解析によりこの装置がエアロゾルの数nmの厚みの表面の反応による変化を検出していることを明らかにした。(Enami et al.Chem.Phys.Lett.455,316,2008)特に微小海塩粒子中に含まれるヨウ化イオンが触媒的にオゾンと反応して気体の活性ハロゲン分子を大気中に放出することを初めて見出した。この研究は春における極域でのオゾンの減衰を説明する発見として非常にインパクトがある。この装置の応用範囲は幅広く,人間の肺や気管支を守っている抗酸化物質であるアスコルビン酸や尿酸が気体オゾンとの不均一反応によって肺炎などを引き起こすオゾニドを生成することを発見した。(Enami et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.105,7365,2008,Enami et al.J.Phys.Chem.B,112,4153,2008,Enami et al.Chem.Res.Toxicol.22,35,2009)このように本測定装置は様々な分野での不均一反応に応用できることを示した。
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