2007 Fiscal Year Annual Research Report
社会不安障害の安全確保行動をターゲットとした新しい治療法に関する研究
Project/Area Number |
07J00909
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
岡島 義 Health Sciences University of Hokkaido, 心理科学研究科, DC2
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Keywords | 社会不安障害 / 安全確保行動 / 認知行動モデル / ビデオフィードバック / 不安障害 / 臨床心理学 |
Research Abstract |
申請者は,社会不安障害(SAD)の維持要因とされている安全確保行動に注目した。SAD患者は恐怖場面内でさまざまな安全確保行動(例えば,アイコンタクトを避ける)を行っている。安全確保行動は,SAD症状(不安,否定的な信念)を維持する機能があり,他者から否定的な評価を受けやすくしてしまう。そこで,安全確保行動に関するこれまでの研究成果をもとに治療プログラム作成し,安全確保行動を治療ターゲットとした心理療法の有効性を検討した。具体的には,SAD得点の高い大学生23名を安全確保行動修正群と統制群に振り分け,恐怖場面(他者との会話)でのSAD症状に対する修正技法の有効性について実験的検討を行った。修正技法として,従来の安全確保行動研究で行われてきた「安全確保行動に関する教示」,および最近注目されている「ビデオフィードバック」を用いた。その結果,上記の修正技法によって恐怖場面でのSAD症状は有意に軽減することが示された。また,安全確保行動を行わない方が他者からの印象が高まることが明らかとなった。これらの成果をもとに,SAD患者に対して安全確保行動の修正技法を用いた心理療法を実施した。その結果,SAD患者のSAD症状もこの修正技法によってある程度改善することが示された。 本研究は,わが国のSADに対して安全確保行動の修正技法の有効性を示した初めての研究である。また,本研究によってこれまで欧米で行われてきたSADの認知行動モデルがわが国においても妥当であることが示され,SADに対する新たな治療技法の有効性が明らかとなった。従来の心理療法の効果が中程度であったことを考慮すると,本研究はSADに対する治療効果を促進するものであり,今後,SADの安全確保行動に対する治療法を確立するために,本研究は重要な意味を持つといえる。
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Research Products
(5 results)