2009 Fiscal Year Annual Research Report
縁起・霊験譚の生成と作品制作の実態的研究―生活の中の信仰と生業の解明を通して―
Project/Area Number |
07J00948
|
Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
日沖 敦子 Nanzan University, 人文学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 中将姫 / 当麻曼荼羅 / 物語絵 / 掛幅絵 / 寺社縁起 / お伽草子 / 漂泊僧 / 髪繍 |
Research Abstract |
今年度は、中将姫物語を享受する場とそれに関わる人々の問題について、主に文化史的な観点から検討を進めた。物語を物語のなかでの事象として分析・検討するのではなく、物語を動態として捉え、物語の基層にある、物語を動かし、創りあげていく民衆のエネルギーを追いかけたいと考えているためである。そこで、今年度は、昨年度、仏教文学会、仏教史学会、説話・伝承学会で発表した、毛髪で曼荼羅などを縫う活動を行った空念や、彫刻で曼荼羅などの仏画を制作した光世ら、江戸時代前期に活躍した僧侶の実態について検討し、『MUSEUM』618号、『仏教史学研究』51-2号、『説話・伝承学』18号にまとめた。さらに、空念の活動については、一般の方に向けて『毛髪で縫った曼荼羅-漂泊僧空念の物語-』(新典社)を書き下ろし、今後の空念研究の一助となるよう努めた。 このほか、2009年3月に、フリーア美術館で開催された奈良絵本・絵巻国際会議で、室町時代に制作されたと推定できる曼荼羅の左右に当麻曼荼羅縁起絵を付した掛幅絵を取り上げ、「当麻曼荼羅と中将姫物語-物語絵の享受-」と題した研究発表を行い、『日本文学』第58巻第7号にまとめた。また、2008・2009年度の2度に亘って個人調査を行った、ボストン美術館、ハーバード大学美術館での絵本・絵巻に関する研究については、来年度以降の発表に繋げていく予定である。2009年7月には、制作において袋中の関与があったと考えられる、檀王法林寺所蔵「当麻踟供養図」に関する研究発表を日本文学協会大会で行い、供養図の伝本を精査したうえで、その制作背景について検討した。その内容については、2010年2月に行ったミシガン大学美術館での供養図の追加調査の結果を加え、近日報告する予定である(投稿中)。
|
Research Products
(6 results)