2008 Fiscal Year Annual Research Report
イヌ肥満細胞腫に対するレチノイドの抗腫瘍効果機構の解明ならびに臨床的有用性の確立
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07J00962
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮島 望 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | イヌ / 肥満細胞腫 / レチノイド |
Research Abstract |
レチノイドの効果発現に関する作用機序を解明するため、細胞内情報伝達やその下流の遺伝子発現を解析し、アポトーシス・分化誘導作用などを確認し、さらに、レチノイド単独投与の場合と比較して、in vitro、in vivoの両面から、併用時に相加・相乗効果が見られるかどうかの検討を行った。 細胞を用いたin vitro実験では、ATRAによる増殖抑制効果とRARα発現との間に強い関連が示された。なかでもイヌの肥満細胞腫では最も強いATRAの腫瘍抑制効果が示され、ATRAはイヌ肥満細胞腫の治療薬となりうること、およびRARαの発現がATRA治療に対する反応性の指標の一つとなる可能性が示唆された。 作用機序に関しては、ATRAはRARαを介して細胞周期を停止させ、一方ではアポトーシス誘導効果も関与して増殖抑制効果を示すと考えられた。 また、ヌードマウスを用いて、in vivoにおいてATRAの増殖抑制効果を確認したところ、コントロール群と比較してATRA投薬群では腫瘍の増殖が抑制された。 しかし他の薬剤と併用した場合、in vitroでは相乗効果が見られたがin vivoでは見られなかった。ATRAを肥満細胞腫の補助的な治療薬として使用するにはさらなる効果・作用機序の検討が必要であると考えられるが、本研究によりその作用機序の一端を示すことができたことは、今後のATRAの臨床応用の可能性を示し、さらにその際の治療計画の決定にも重要な情報となるものと考えられた。
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