2007 Fiscal Year Annual Research Report
スラヴ諸語における所有性の意味及び構造の類型論的研究
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07J00974
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野町 素己 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | スラヴ語 / 言語類型論 / 所有性 / 統語論 / 形態論 / 動詞時制 / 機能文法 / 認知言語学 |
Research Abstract |
本年度はスラヴ諸語における「所有性」の意味カテゴリー研究のなかでも、特にその周辺領域(過渡的領域)の言語現象の研究を行った。具体的に得られた研究成果は、以下の3点である。いずれもこれまで扱われてこなかったテーマで、これらの成果はスラヴ語類型論および言語接触研究において重要な意味を持つ。 1、セルビア語における所有構文とhabere完了構文の文法化の度合いについての研究 2.カシュブ語における借用habere完了構文の記述と分析 3.スロヴァキア語の間接受動態構文の構造的、意味的特徴の研究およびその類型論的位置づけの検証 1は、これまで分析が行われていないセルビア語のhabere+受動分詞構文の形成の際の形式、および意味的な条件を、構文の「文法化」という視点から、当該構文の文法化の度合いが高いマケドニア語と明らかにしたものである。 2は、これまでドイツ語の借用と指摘されてきたカシュブ語におけるhabere構文の文法化の度合いについて、該当するドイツ語の構文および、同様の形式を持つポーランド語の構文と比較して分析したものである。分析の結果、カシュブ語は当該構文の文法化の度合いは高く既に動詞のカテゴリーとして成立しているが、ドイツ語のそれと比べると不完全であること、またポーランド語とは形式は類似するが、ポーランド語では動詞の独立したカテゴリーではないこと、また完了性ではなく結果性を表している点で異なることを指摘した。 3は、スロヴァキイ語における所有の移動を表す動詞dosatが、受動態の意味へと派生する現象について、その形式意味的制限についそ記述、分析を行った。また、当該構文が地域的にばドイツ語からの影響の可能性があるが、ドイツ語構文のプロトタイプと使用制限が異なるため、ドイツ語を通してチェコ語からスロヴァキア語に2次的に入った可能性にも言及した。
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