Research Abstract |
本研究の主題は,冬季海面水温偏差の「遠隔再出現」現象を軸に,北太平洋における大気海洋系の長周期変動(約10年周期変動)メカニズムを明らかにすることである.これを実現するためには,北太平洋中央部に位置する「アリューシャン低気圧」の活動度を理解することが必須である.そこで,本年度は,近年整備された観測資料を活用し,アリューシャン低気圧変動の実態を解明することを目指した. 冬季北太平洋中央部領域で,海面気圧が最小値をとる箇所をアリューシャン低気圧の中心位置と定義し,その強度と位置(緯度・経度)に関する時間変動を調べた.結果,アリューシャン低気圧は,2つの時間変動スケールを内包していることを初めて見出した.すなわち,20年周期をもつ強度と経度方向の変動,および,10年周期をもつ緯度方向の変動である.アリューシャン低気圧の20年周期変動は,大気テレコネクションパターンの一つであるPacific/North American(PNA)パターンと,一方,10年周期変動は,West Pacific(WP)パターンと関係があることを明らかにした.20年の変動周期は,過去の研究でも指摘されているが,10年周期変動の存在を示したのは本研究が初めてである.そこで,このアリューシャン低気圧の10年周期変動が,海洋表層場に与える影響について調べた.その結果,アリューシャン低気圧変動によって励起された海洋ロスビー波が,黒潮流量,および,黒潮続流域の海面水温変動を決定していることが明らかになった. 本成果は,大気海洋相互作用系の長周期変動の理解,および実態解明に資するものである.
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