Research Abstract |
北太平洋において,冬季海面水温偏差の遠隔再出現現象が起こる要因を,表層貯熱量変動の観点で調べた.その結果,遠隔再出現発現期に,遠隔再出現海域(北太平洋中央部)を覆うように,正の貯熱量偏差が分布していることがわかった.この貯熱量偏差は,再出現海域の西部(北太平洋西部)から,海流系により移流してきていた.貯熱量偏差の移流は,アリューシャン低気圧の強弱と関係があり,その移流時間スケールは約3年であった.すなわち,アリューシャン低気圧の強化(弱化)の4年後に,正(負)の貯熱量偏差が北太平洋西部にあらわれ,移流の効果により,その3年後に北太平洋中央部に到着する.また,共同研究として,黒潮流量変動とその要因を調べた.結果,黒潮流量変動も,アリューシャン低気圧変動の影響を受けていることがわかった.すなわち,アリューシャン低気圧強化(弱化)の4年後に,黒潮流量は増加(減少)していた.その変動は,大気強制変化にともない発生した海洋ロスビー波によると結論づけた.また,黒潮流量増加期は,黒潮域(北太平洋西部)に正の貯熱量偏差が分布する時期に相当する.本結果は,表層貯熱量変動や遠隔再出現現象と,亜熱帯循環系の海流系が関連することを示したものである. 表層海洋場に果たす大気強制場の役割を理解するために,大気テレコネクションパターンと,北大西洋海洋循環場との関係を調べた.その結果,North Atlantic Oscillationが海流系の強度変動をもたらし,East Atlantic patternが海流系の南北シフトの要因となっていることを見出した.さらに,共同研究者と,南半球における大気テレコネクションパターンを同定することを試みた.回転経験的直行関数解析を適用することで,5つのパターンの存在を初めて示した. 本成果は,大気海洋相互作用系の長周期変動の理解,および実態解明に資するものである.
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