2007 Fiscal Year Annual Research Report
X線天文衛星「すざく」による銀河面からの熱的、非熱的X線放射起源の観測的研究
Project/Area Number |
07J01035
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田和 憲明 Osaka University, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | X線天文学 / すざく衛星 / バックグラウンド / 銀河面X線源 |
Research Abstract |
私は2005年7月に打ち上げられた日本のX線天文衛星「すざく」を用い、銀河面に存在するX線放射源について研究を行った。「すざく」衛星に搭載されたX線CCDカメラ(XIS)の特徴としで、広い有効面積と、低く安定したバックグラウンドレベルが挙げられる。この特徴を生かすためには、非X線バックグラウンド(NXB)を正確に見積もる必要がある。NXBは主に荷電粒子によって発生するため、衛星の軌道位置によって変動する。そこで、このような変動を補正したNXBモデルを作成する手法を確立し、NXBの再現性をおよそ5倍改善した。また、宇宙X線背景放射(CXB)も銀河面の解析では重要である。そこで、「すざく」の観測を用いて、CXBのスペクトルとその空間的なゆらぎを調べた。CXBスペクトルはpower-lawモデルでよく再現でき、その冪は1.451±0.034、フラックスは(4.37±0.14)×10^<-15>erg cm^<-2>s^<-1>arcmin^<-2>(2-10keV)であった。また、フラックスのゆらぎは12±2.4%であった。 銀河中心を銀径方向に5つの視野について計7回観測し、そのデータを用いて研究を行った。XISで得たスペクトルを制動放射に複数のガウス関数を加えたモデルでフィッティングし、Fe XXV Kαの中心エネルギーと輝線の広がりを求めた。その結果、中心エネルギーは6680±1 eVであり、輝線の広がりの標準偏差は39±2 eVであった。電荷交換によってこの輝線が放射されたとすると、鉄原子の高速な運動によって赤方、青方偏移が起こり、輝線幅が標準偏差で100 eV程度広がると考えられる。しかし、XISの観測結果から得られたFe XXV Kαの輝線幅は電荷交換から予想される広がりよりも狭い。また、Fe XXV Kαはエネルギーがわずかに異なる3つの輝線から構成されているため、原子の運動がなくとも40eV程度は広がる。よって、銀河中心からの鉄輝線は電荷交換ではなく、熱的な高温プラズマからの放射が優勢であることがわかった。
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Research Products
(3 results)