2007 Fiscal Year Annual Research Report
応力下水素拡散係数測定ならびに破壊挙動解析による高燃焼度燃料被覆管の寿命評価
Project/Area Number |
07J01041
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊東 正登 Osaka University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Zr合金 / 軽水炉燃料被覆管 / 水素 / 応力 / 第一原理計算 / 有限要素法 |
Research Abstract |
近年、軽水炉燃料の高燃焼度化が進められており、水素遅れ割れと呼ばれる燃料被覆管の水素脆化がますます問題視されている。本研究にて、水素遅れ割れ現象において重要となる応力場での水素挙動を、第一原理計算、実験および数値解析によって評価した。 Zr中水素の存在状態に与える応力の影響を第一原理電子状態計算により評価した。水素部分モル体積は静水圧応力の増加とともに減少したが、その変化は非常に小さいことがわかった。Zrの水素溶解エンタルピーが計算され、静水圧応力の増加とともに上昇することがわかった。この応力依存性には異方性が見られ、a軸方向よりc軸方向の応力の影響が大きいことが明らかになった。Zr中水素の溶解度は、特にc軸方向に引張応力がかかっている時に増大する可能性が示唆された。この結果は、集合組織を有するZr合金の応力集中部における水素挙動を評価するうえで重要である。また応力下での水素挙動を実験的に評価するために、必要な装置が整備され測定技術について知見が得られた。 燃料被覆管中の水素挙動を有限要素解析により評価した。現在問題になっている高燃焼度燃料被覆管の水素脆化挙動において、応力勾配によるき裂先端への水素拡散が重要であると考えられる。き裂部への水素の集積を非定常拡散解析により模擬し、き裂数やき裂深さ、内圧等の影響を評価することに成功した。き裂深さ、内圧の増大により水素が集積する領域が拡大することが明らかになった。また、数十秒〜千秒と非常に短時間で水素濃度は有意に増大した。以上の結果より、PCMIや半径方向水素化物などの複合的要因で、ごく短時間の間にき裂が貫通にいたる可能性があり、報告されている高燃焼度燃料被覆管の破損挙動を説明できた。
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Research Products
(1 results)