2007 Fiscal Year Annual Research Report
オオバナノエンレイソウにおける繁殖様式の進化に関する研究
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07J01050
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
久保田 渉誠 Hokkaido University, 大学院・環境科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 繁殖様式 / 進化 / 分子系統解析 / 自家和合性 / 自家不和合性 / オオバナノエンレイソウ / 自殖 / 他殖 |
Research Abstract |
「オオバナノエンレイソウにおける生理的繁殖様式の二型と系統関係の比較」 被子植物では他殖性から自殖性への進化の例が数多く報告されている。また、他殖のみ可能な自家不和合性植物と自殖が可能な自家和合性植物の系統関係を調べると、多くの場合自家不和合性から自家和合性が派生することから、一般的にこの進化は一方向性(他殖から自殖)であると考えられている。オオバナノエンレイソウは種内に自家和合性と自家不和合性の集団が存在し、自家不和合性集団から自家和合性が進化したと考えられてきた。しかしながら、過去に行われた交配実験と遺伝分析の結果、自家和合性集団では自殖に比べ他殖のほうが有利になる選択圧が存在していたため、繁殖様式の進化の方向性について正確な調査が必要とされていた。本研究は多数の自家和合性・不和合性集団を対象に分子系統解析を行うことで、オオバナノエンレイソウにおける繁殖様式の進化の方向性を決定することを目的とした。39集団(自家和合性:29、自家不和合性:10)の葉緑体DNA変異を解析し、系統樹を作成したところ、オオバナノエンレイソウでは自家不和合性集団は単系統であり、自家和合性集団から派生していることが明らかになった。また、自家和合性集団は北海道から東北地方にかけ、広い範囲に分布しているのに対し、自家不和合性集団は分布域の端である北海道の日高・十勝地方にしか存在しない。一般的に分布域の端に存在する集団は、遺伝的交流からの隔離・遺伝的浮動・自然選択などによって分化が生じ易いことから、地理的分布からも自家不和合性集団が派生的であることが支持されている。自家和合性から自家不和合性への進化はいくつかの系統学的研究でも指摘されているが、生態的・地理的・系統的側面から綿密に調査した研究はこれまで存在せず、本研究は植物の繁殖様式の進化を考察する上で非常に有意義であると考えられる。
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Research Products
(7 results)