2007 Fiscal Year Annual Research Report
π結合が中程度に解離した新規π共役分子の設計・合成・物性測定と無限共役系への展開
Project/Area Number |
07J01056
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清水 章弘 Osaka University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フェナレニル / 一重項ビラジカル / FET / 二光子吸収 |
Research Abstract |
一重項ビラジカル性と物性の関係を詳細に解明するために、二つのフェナレニルをアントラセンでつないだ新規π共役分子ADPL誘導体を設計し合成した。合成した分子の酸化還元電位、電子スペクトルの測定から、HOMO-LUMOギャップが小さいことを明らかにした。ADPL誘導体を合成したことで、フェナレニルを基盤とした一重項ビラジカル性の異なる三種の化合物が合成され、一重項ビラジカル性と物性の関係を系統的に研究できるようになった。また、分子集合体の性質を明らかにするために結晶化を行った。フェナレニル部位での特徴的な重なりは見られなかったが、不対電子が分子内だけでなく分子間でも強く相互作用していることが明らかになった。現在、フェナレニル部位での特徴的な重なりを実現するために、ADPLの別の誘導体を設計し、合成を行っている。 フェナレニルを基盤とした一重項ビラジカル性を有する分子は、HOMOとLUMOが非結合性軌道であるフェナレニルのSOMOを反映していることから電子の授受が容易である。また、結晶構造からフェナレニル部位を通じた分子間でのキャリヤーの移動も容易であると考えられた。そこでFET測定を行ったところ、p型、n型両方のFET特性が観測された。両性のFET特性を示す化合物は非常に少なく、一重項ビラジカル性を有する化合物が、両性FETの今後の設計指針になることが期待される。 さらに新しい展開として、一重項ビラジカル性を有する分子の二光子吸収測定を行った。その結果、分子内に電子供与性や電子吸引性の部位がないにも関わらず、非常に大きな二光子吸収特性が観測された。一重項ビラジカル性を有する分子が大きな二光子吸収特性を示すことはこれまで理論的に予測されていたが、本研究で初めて実験的に明らかになった。二光子吸収特性に関しても、今後の設計指針を与えるものである。
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